蜃気楼をつかまえろ | ナノ
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「#年下攻め」のBL小説を読む
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ドンッ


「っ」
「あ、わりーわりー!」


島(名前忘れた)の居酒屋に入ろうとドアを開けた瞬間、中から勢い良く出てきた人とぶつかった。


…鼻いた…。


ぶつかった人は軽く謝ったと思うと走っていく。

じんじんと痛んできた鼻を押さえて俯いていると、ふっと影がかかった。


「…?」
「くそ…っ、すばしっこいガキめ!」
「……」
「誰でもいいから払ってくれー!」
「……」


そこで店主であろう男の目が私に向いた。


…嫌な予感…。


ばっと振り返り走り出す。


「こら待てー!」
「なんで私が…」


怒りすぎて思考回路がおかしいよ店主さん。
私なんにもしてないのに。


ぶんぶんとまるで漫画みたいにフライパンを振りながら追いかけてくる(重くないのかな)店主さん。
そして少し走ると、さっきぶつかった男が悠々と歩いていた。
そう、私が追いかけられてる根源だと思われる男。


店主さんが追いかけてこなかったからって油断してるな…くそう、元はと言えばこの人が悪いのに。
払ってくれとか言ってたし、きっと食い逃げだ。

「あー食い逃げ犯はっけーん」
「なにィ?!見つけたぞクソガキー!」


わざと店主さんの方を向き聞こえるように言った。
眉を更に吊り上げた店主さんから視線をまた前に戻して、悠々と歩いている男の横を駆け抜ける。


げっ!とか声が聞こえた気がするけど、気にしない気にしない。


とばっちりを喰らうのは嫌だから変わらず走り続けていると、後ろの店主さんの怒鳴り声がまた大きくなった。


「ごるぁああああ!待てえええ!」
「え…」
「お前言うなんてズリィじゃねえかー」
「………」


たったっと軽く走る男が私の隣で眉をしかめながらそう言った。


なんで居るんだ。
早く店主さんに捕まれ。


「ごるぁあああ!そこの二人、止まれえええ!」


早く店主さんに捕まれ。
いや、私じゃなくて。


「う…疲れた…」
「もうか?はえェなあ」
「だから捕まれ」
「ていうかなんでお前も逃げてんだ?」
「…怒り狂った店主さんの八つ当たり…?」
「ははっ!そっか、わりーわりー!」
「だから捕まれ」


ていうか喋るのキツイ。
喉も痛いし、こんにゃろーなんでこんな目に。


軽く咳をする。
と、隣の男がニカッと笑った。


「じゃあ詫びだ!」
「…?」
「掴まってろよ!」
「ぐえっ」
「ゴムゴムのォ…!」


掴まってろよ、って…首根っこ掴まれて何処に掴まれと。
ていうかゴムゴム?


すると男の腕がびよーんと伸びた。
その腕の伸びた先には海岸に止まっている船。


「ロケット!!」


思考する暇も無くぐわんと体が引っ張られた。
脳味噌が揺れた。
気がする。
首根っこを掴まれていたのがいつの間にか背中に変わっていて片手で抱きしめられている。


―…この男、能力


「あり?」


者……?
え、ありってなに。
……あ…やばい、この男が本当に能力者なら…。


「っかしーな、止まんねえ」



――どがああああん!!!



そんな音を最後に私の意識はブラックアウトした。




(初めまして)
101109.