人通りが多い街の中。
宿屋を探して歩く。
「………」
そんな中で物陰から、もしくは建物の中から視線を感じていた。
…今回見つかるの早いなぁ…ていうかこの島に海軍が多い気がする。
…海軍に行くのは別にいいけど、此処はまだ麦わら海賊団が居る島だからなぁ…海軍に連れてかれるのを万が一でも見られたら、きっとあの人達なら放っておかないと思う。
そうなったら「なんで麦わら海賊団が…!まさか仲間か!」どがんばきんだ。
……人通りの少ない所に行くかぁ。
街を抜けて倉庫が立ち並ぶ海側の方へ来た。
そこを少し歩けば後ろから足音が聞こえる。
振り返れば、ずらりと並んだ海軍兵。
「名字名前か」
すると前から声が聞こえて体を戻せば、少し偉い型の軍服を着た男。
「無言は肯定とみなす」
「………」
「一緒に来てもらおうか」
何も言わずにいると、その男が近付いてくる。
それを何も思わず眺めていると、次の瞬間、だんっ!と上から
「――おれの仲間に手ェ出すな!!」
ルフィが降ってきた。
――……え…?
「お前は…麦わらのルフィ!」
「何故お前が名字名前を…フ、そうか。お前がこの島までの仲間だった訳か」
「この島までじゃねェ!この次もで、これからもだ!な!名前」
「え…な、じゃないよ。なんで居るの」
「仲間だからだ!」
「………」
「…名字名前、」
「………」
「麦わらのルフィはお前の仲間か?」
「…ち」
「ドスフルール」
「がむぐっ」
違う、と答えようとした瞬間、肩から出てきた手によって口を抑えられた。
「……ロビン…」
「さっきぶりね、名前」
ふわりと花びらと共に消えた手。
振り返れば、
「……え…」
「こりゃまた数だけ集めたもんだな」
「ルフィー!どうしてアンタはそう突っ走るのよ!」
「無駄だナミさん、アイツは脳味噌までゴムでできてやがる」
「っへへん、ウソップ様の必殺奥義!隠れる!」
「俺の後ろにーっ?!」
「こんだけならコーラ温存しといても楽勝だなァ」
「女の海軍…居ませんね」
――そこには、麦わら海賊団の皆が居た。
ゾロ、ナミ、サンジ、ウソップ、トナカイ、フランキー、ブルック。
…?
ゾロ、ナミ、サンジ、ウソップ、トナカ………トナカイ?
…チョッパーはトナカイで、ウソップの隣に四本足で立っているのもトナカイ(普通トナカイは四本足だけど)。
……あれ、チョッパー…?
――バキン!!
「麦わら海賊団が勢揃いとはな…大漁だ」
すると嫌な音が響いた。
見ればにやりと口を吊り上げた男。
足元には無惨に粉々になった子電伝虫。
私の前に立つルフィがぐ、と足に力を入れる。
他の皆も武器を構えたり、戦闘体制に入る。
男がゆっくりと指を此方に向けるのを見て、私は思わず
「リジェクション、…あ…」
本当は何かが割れる音やら人の呻き声が聞こえるかもしれなかったけど、辺りは変わらず何も起こらない。
指を此方に向けたままピキリと額に青筋を浮かべた男とは対称に、ルフィは笑って私を見た。
「にししっ!サンキュー!」
そしてぐるりと背中に腕が回った。
「わ、」
「行くぞみんなーっ!」
「「「おうっ」」」
海岸に向かって突き進んでいく皆は立ちはだかる海軍兵を薙ぎ倒している。
ルフィは私を片手で支えながら笑って海軍を倒す。
「名字名前は傷つけるな!上からの命れ」
「にししっ!」
「ぐあっ…!」
「う……」
「ん?どうした?名前」
「…目…回っ…た」
「ははっ!わりーな!」
「離せばか…」
「それは無理だ!」
ルフィが私を抱えながら動くから、つまりルフィと同じように動く。
ぐるぐる回ったり好き勝手にジャンプする視点はかなり激しい。
シュッ!!
するといきなり拳が飛んできた。
すんでのところで避けたルフィが前屈みになるから私は腰が折れそうだ。
「おっ!お前素手でも戦えるんだなー」
「ル…」
「フン、能力だけに頼ってはこの位までは来れん」
「フィ…」
「おーい皆ァ!先船行ってろ!」
「…ル、フィ」
「出航してるぜー!」
「………」
「逃がさんぞ…!」
「…離せばか…」
「それは無理だ!」
なんでそこだけ反応するんだ、絶対聞こえてただろこのやろー。
他の皆は海軍兵を倒し少し遠くに見えるサウザンドサニー号に乗り込んでいく。
もはや海軍側で一人となった男の攻撃を交わしながら、ルフィは私を見た。
「名前、一気に此処からサニー号までブッ飛ぶから力貸してくれ!」
「………」
…此処に麦わら海賊団の皆が来てくれた時に、あぁ私の事を知ったんだろうなとは思ったけどやっぱりかぁ。
…能力を使えば、きっと此処からでもサウザンドサニー号にルフィは届く。
それに乗り込んでしまえば、海軍から逃げることが出来る。
…けどそれはつまりルフィ達の船に乗ること。
ルフィ達が嫌な訳じゃない…けど私は海軍に着いていってもいいんだ。
今ここで海軍につけば、海軍は麦わら海賊団を襲わない。
…けど、ルフィ達に着いていけば…―
「ゴムゴムのォ…!」
「ってもう伸ばしてたー」
男の攻撃を避けながらも既にサウザンドサニー号に手を伸ばすルフィ。
能力を使うか使わないか。
その選択を選ぶ余地は私には無かった。
――肩越しに見えた、ルフィに向かって拳を繰り出す男によって。
「レリーフ」
ぐんっと伸びたルフィの腕。
サウザンドサニー号の柱を掴んだ瞬間、私とルフィの体は文字通りブッ飛んだ。
「おわーっ!スゲエなこれーっ!」
サウザンドサニー号に近付いた時にルフィは柱を掴んでいた手を離した。
それでも勢い良く飛んで、着地したのは丁度甲板。
「行くぜ!しっかり掴まってろよおめェらあ!」
おぉと関心したのも束の間、再びルフィの力が強くなる。
「風来バースト!!」
……今日一日で内蔵がやばいことになった気がする。
(…良かったのかな)
101114.