不幸と幸福は数珠繋ぎ | ナノ
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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「リヴァイ、どうして着いてくるの?」
「…悪いか」
「悪いよ!」


当たり前の問いに当たり前の答えを返せばリヴァイは見るからにショックを受けた顔をした。


「どうしてそんな顔するの?だってわたしといっしょにいたら、不幸がうつっちゃうんだよ?」
「…そういうことなら問だいはない。お前のその不幸たいしつとやらでどうにかなるほど、おれは弱くない」
「でもさっきはなぐられて、けられて…」
「言っただろ、ここは前からはきだめみてえな場所だ。あれにお前は何もからんでねえ」
「…やっぱりリヴァイって、天使?神様?」
「お前がな」
「えへへ、リヴァイってじょうだん言うんだね」


久しぶりの人との会話、それも楽しいものに思わずほっぺがゆるむ。

ーーけっきょく、いつもわたしが寝ているばしょまでリヴァイは着いてきた。
何かが落ちてきたり、何かにつまづいたりしないために、何もないこのばしょで。
不幸をうつさないように、だれもいないこのばしょで。

となりに座りながらねむるリヴァイを見つめる。
そして、しずかに立ち上がった。
音を立てずにこうどうすることはなれている。
ーー少し歩いてからふりかえれば、さいわいにもリヴァイは気づかずねていて、わたしはホッと息をついてからまた歩き出す。


リヴァイがやさしいからこそ、不幸をうつしたくない。


「きゃ、」


するといきなりわき道から手を引かれて、思わず声が出た。

けれどそれは直ぐに大きな手によってふうじ込められる。
引っ張られたままざつに地面に投げられたわたしの目に映るのは、目の前に立つ三人の男の人たち。


「こんな夜中に一人でいたら、悪い大人にさらわれちゃうよお嬢ちゃん」
「おっ、地下街にいるにしちゃあ肌も髪も綺麗じゃねえか」
「それに上玉だ。この年でも十分買い手はいる。成長すればもっとだがな」


わたしを置いて何やら話を盛り上がらせている三人を見上げながら思う、不幸だ、と。


多分この人たちはちまたでウワサになっている、じんしんばいばい、をやってる人たちだろう。
まあ地下街にそんな人たちなんて、たくさんいるけど。
…でもよかった、はやめにリヴァイからはなれていて。
リヴァイはかっこいいしキレイだから、きっと見つかったらこの人たちもっと盛り上がってリヴァイを売っちゃう。
不幸をでんせんさせなくて、よかった。


すると何やら話していた三人の内の一人の足が急にうごいた。
ふしぎに思っている内にわたしのはらにめり込むその足の先。


「ぅえっ、ガハッ」


けられたばしょからのどの奥まで一気にしょうげきがめぐって、思わずたおれせき込む。
吐きたい気持ちとおなかのいたみになみだが出てくる。


「さあて、大人しい内に連れてくか」


そうして男の手がわたしに伸びてきたしゅんかん、右の方から足音が聞こえて。
男の手が止まる。

わたしも地面にたおれながら見上げる。

そこにはリヴァイがいた。


「おいガキ、」


ーー男の人のだれかがリヴァイに対してそう言いかけたのは覚えてる。

だけどそれからはじたいの急展開をあぜんとしながら見ていただけで。
ビシャッとほっぺにあたたかいものがかかって、いしきがハッキリしてくる。
ほっぺをさわると指についたものは血だった。


「リ、リヴァイ、リヴァイっ」


すでに男の人三人はさっきまでのわたしみたいに地面にたおれていて、リヴァイがその中の一人のかおをなぐっている。
何度か名前を呼ぶとリヴァイはわたしを見て、そしてすぐにこっちに来るとわたしのほっぺを自分の手でゴシゴシとぬぐってくる。


「きたねえ」
「リヴァイ、この人たち」
「ちっ、落ちねえな」


水があるところに行くぞ、そう言ったリヴァイに手を引かれて歩き出す。

ふりかえると男の人たち三人はボロボロになり気を失っていた。















ーー古びた木のおけに水がたまっているところまで連れてこられたわたしは、その水につけた布をベシャッとほおにあてられる。


「がまんしろ、アイツらの血よりずっとマシだ」
「リヴァイもついてるよ、血」


ゴシゴシとふいてくるリヴァイの顔に手を伸ばす。


「さわるな」
「え…」
「よごれる。アイツらにふれるな」


そう言ったリヴァイはわたしの顔をふき終え、今度はおけの水をすくい自分のかおを洗う。
ーーそうして満足したのか息をついたリヴァイは相変わらずの目つきでわたしを見た。


「どうしてあのばしょからはなれた」


そんな問いかけがくるとは思ってなかったわたしは目を丸くしつつも口を開く。


「リヴァイに、不幸をうつしちゃいけないから」
「ちっ。…おいナマエ、お前は人の話を一度でりかいするようにしろ。さっきも言ったが、おれはお前のその不幸たいしつとやらでどうにかなるほど弱くない」
「…うん、そう、なのかもしれない」


さっきのリヴァイは、強かった。
不幸を、追い払ってた。


わたしの答えに満足したのかリヴァイは少し目を細める。


「それにナマエ、お前を不幸から守っても、まだおれには釣りがくる」
「リヴァイ…」


ーーリヴァイは、不幸を、わたしのせいじゃないと言ってくれた。
ーーリヴァイは、不幸にやられるほど弱くない、むしろ追い払うほど強い。
ーーリヴァイはわたしのことも、不幸から守ってくれた。


わたしはリヴァイに抱きついた。


「リヴァイ、リヴァイは本当にわたしの天使だよ!神様だよ!リヴァイはわたしの幸せそのものだよ…!」
「…お前がな」



140220