拍手文 | ナノ
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
私は最近、おかしい。
いやおかしいといえば昔から、主に頭や精神的におかしかったのかもしれないがーー最近は身体的にもおかしいのだ。

何故かと言えばまず心臓がドキドキする。

私は時空眼を持つ一族唯一の生き残りであり、時空眼は使用するとその大きな効果、利益の代償に使用者の体に決して軽くない負担がかかる。
けれど、使用後を除けば私はいたって健康体だ。

問題はその胸の高鳴りが、時空眼使用後に起こるものではないことであり…そしてその発生状況はすでに狭く絞られている。


「名前さん、ですよね」
「はい。もしかして、今日の任務で同じ小隊の方ですか?」
「リクっていいます。今日はよろしくお願いします!」


木の葉隠れの里の門前、今日の任務を共にこなす小隊の人を待っていると話しかけられて。

リクと名乗った背の高い男性は人好きのする笑みを浮かべた。


「ていうか、俺に敬語なんて使わないでください。名前さんより実績も地位も低いし…」
「そんなこと関係ないですよ。でも、ありがとう。リクも気軽に接してね」


にこっと笑う。

するとリクはウズウズと体を震わせると、嬉しそうに笑い「本当、よろしくお願いします」と手を差し出してきた。


さっきも挨拶してくれたのに、わざわざ二回も、それに握手まで…!
いつだかこの前キバが「最近の若ェ奴らはよーー」と愚痴をこぼしていたけれど(その後直ぐに紅先生に、あなただって十分若いと指摘されていた)やっぱり木の葉は教育面も素晴らしいんだな。


ほんわかした気分で、リクの差し出してくれた手に自分のを重ねる。
けれど握り返す、という行為の前に後ろから反対の腕を掴まれ引き寄せられて、私の手はリクの手から滑り抜けた。

よろめいた体は、誰かに背を預ける形で止まって。
そうしてその人を振り向き見上げるとーー起こる症状、胸の高鳴り。


「サス、ケ」


ドクン、と胸に苦しさを感じさせる鼓動に、またかと少し眉を寄せて胸のあたりの服を握る。

サスケはといえば私の腕をつかんだまま、けれど視線は真っ直ぐにリクを見ていた。


サスケ、リクのことそんなに見ていったい…リクも案の定なんだか気まずそうというか、苦笑しているし…。
もしかして、今日の小隊の隊長はサスケだから、任務前にメンバーの品定めというか、分析をしているのかな。
それなら大丈夫だよサスケ!
リクは最近の若者(キバ談)にしてはすごく礼儀正しいから!


「元々俺達は、俺と名前の二人で任務をこなしてた。人材育成の為と聞かされてるが…余計なことはするな。分かったか」
「…任務中、の話ですよね。もちろん分かってます」


にこり、笑ったリク。


「…いい度胸してんじゃねェか」


サスケは微かに眉を寄せながら口角を上げた。


「ーー遅れてすいませーん!」


すると空から高い声が聞こえて、見上げるとくの一がひとり、降りてきた。
その子はサスケのすぐ隣に着地すると、その勢いのままサスケを見上げる。

私はといえばその一連の流れの中でサスケが腕を離してくれたから、私自身も少し離れていた。


「すいません、遅くなって。今日の任務サスケさんと一緒だって聞いて、おめかしに時間かけてたらこんな時間になっちゃって」


あ、私ソラっていいます!とウインクしたその子に、サスケは眉をさっきよりも寄せ、リクは変わらずにこにことしたまま。

私はーーチクリと痛んだ胸に、胸あたりの服を握り眉を寄せながら疑問符を浮かべた。


なんだろう、また胸が痛い…。
けれどさっきとも違うし…。
さっきのは嬉しい痛みだったけれど、今の痛みは苦しい、気分が悪い…。
いやそもそも、嬉しい痛みってなんなんだ、私は別にマゾヒストとかではない!


はた、と自分で自分にツッコミを入れていることに気がついて、落ち着くよう息をつく。

ふとサスケを見れば、ソラという子に笑顔で色々とまくし立てられていた。

ズキズキ、痛む胸にまたうつむく。


やっぱりおかしいな、また胸が…気持ち悪い。
前までなら、サスケはやっぱりモテモテだなあ、人気あるなあ、なんて任務中の楽しみが増えたことを喜んでいたのに。


「はぁ…」


やっぱり想像というか妄想というか、まあそういうものに限らずだけれど健康は第一条件だよね。
はやくこのわけの分からない症状を分析して、取り除かなきゃ。


「名前」


するとサスケに名前を呼ばれ、顔を上げると近い距離にサスケの整った顔があった。

また、心臓が重く鳴る。


「具合、悪いのか」
「え…あ、ううん、大丈夫だよ」
「…ったく」


サスケは息をつくと、グシャグシャと私の頭を撫でた。


「また前みたいに、自分のこと隠したりするなよ」
「あはは…了解です、隊長」


髪を直し笑いながら言った言葉に、サスケも軽く笑った。
その笑顔を見て、今度私の心臓はツキンと跳ねた。



(この症状は、サスケがいる時によく起こる)


130829