オロシ様に噛まれた手を我愛羅にゴシゴシと洗われて、一段落した三人に『結局その任務を受けたのか』と問われ頷けばこってりと絞られた。
里にきちんと報酬を支払ってくれる正当な任務のため怒る理由が分からず焦る私に三人はため息をつきーーそうして今は我愛羅に手を引かれ自室に入り、ベッドの上で二人向かい合っている状況だ。
「名前…俺やテマリ、カンクロウが怒る理由が分からないのか」
「前に三人から、自分のことで隠し事はしないように言われたのに、今回の任務内容を伏せているから…?」
「…それもある、が、一番ではない」
なん、だと……?
今の答え、必死に脳内検索をかけてやっと見つけたものなのに…!
「えっと……任務をこなして、報酬が里に入ることはつまり里の為になることだと思っていたけれど、それを風影である我愛羅に秘密で勝手に決めたから…?」
「違う。俺のことは関係無い」
「えっと、えっと……こ、こんなことで三人を悩ませて、明日も早いのに夜更かしをさせてしまってい…!」
「違う」
結構な自信の持てる答えを導き出せたため顔を輝かせながら言葉を紡げばそれを遮られ否定された。
思わず眉を下げれば、我愛羅は私に手を伸ばしゆっくりと抱きしめる。
「名前、お前が、自分のことを考えないからだ」
「自分のことを……」
「前からずっと言っているが…名前はこのことだけは直ぐに忘れるな」
「けれど私、役に立てるなら嬉しいと思って、だから自分のことを考えていないわけじゃ…」
すると我愛羅は少しだけ体を離すと不満を目で訴えてくる。
「ならば俺のことを考えろ」
「我愛羅のことを……考えているよ?」
「この任務をお前が引き受けて、俺が喜ぶと思ったのか」
「里の為になることは我愛羅の為にもなることだと思うから…」
「俺は、お前がそうした任務で得た報酬を渡されても嬉しくはない」
思わず閉口する。
「里のことは関係無い。俺と、自分のことだけ考えてみろ。そうすれば、気づかないか…?」
「我愛羅と、私のことだけ…」
「名前、先程も確認した…お前にとって俺は、どういう存在だ」
私にとって我愛羅が、どんな存在か…?
まだ少しの不満さをその目に孕ませつつ見つめてくる我愛羅を見上げる。
すると胸にわき起こる嬉しさと愛しさに、自然とにっこりと笑っていた。
「大好きな人」
言えば我愛羅は息をのむと再び私を抱きしめる。
首元に我愛羅の熱を感じる。
「俺もだ…名前」
「ありがとう我愛羅、とても嬉しい」
「愛しくて、仕方がない」
我愛羅の言葉がくすぐったくて笑う。
すると我愛羅は私の頭を撫でてくれていたかと思えばハッと肩を揺らしてまた少しだけ体を離した。
「話を戻すが……とにかく名前にその任務は受けさせない」
結局私が自分のことを考えない云々の話は分からない点もあったけれど、風影でもある我愛羅の言葉だ、受け入れよう。
オロシ様へどう断りを入れるかを考えつつも頷けば我愛羅は安心したように息をつき、褒めるように頭を撫でてくれた。
けれど少し目を細めたかと思えば私の手を取り優しく歯を立ててきたので、目を丸くする。
「我愛羅…?」
「…名前、お前の辛い顔や、悲しむ顔は見たくないし、そうさせる者は許さない。が……俺の知らない表情を…俺の知らない名前を他の者に見られたことが…」
つまり私の嫌がる様が見たくて、オロシ様がしたように手を噛んできたということかな……う、うーん、けれどなあ。
「私は我愛羅が大好きだから、手を噛まれても、何をされても、嫌な気持ちになんてならないよ」
むしろ嬉しーーと続けようとしたところで、私の世界は反転したのだった。
140612