俺がリドルと初めて会話してから一ヶ月位が経った。
そしていま俺は、人もまばらな大広間の、スリザリンのテーブルに一人でいるリドルの元へと歩いていって、
「おい、リドル…!」
バンッ!とテーブルを叩いたところだ。
リドルは飲んでいたコーヒーをテーブルに置くと、にっこりと笑って俺を見あげる。
「やあ名前、君から会いに来てくれるなんてね、とても嬉しいよ」
「最初で最後に決まってんだろハゲ」
「心外だな、僕はハゲてなんかいないよ」
「ウゼェエエ!真面目に返してくんのウゼェエエ!しかもコイツの場合全部分かってやってんのがウゼェエエ!」
グシャグシャと自分の髪を掻き乱すけど、リドルはいたって変わらず、つうか余計に笑みを深めたから、更に苛立ってダン!と再びテーブルを叩いた。
「お前に、言いたいことがあんだよ、リドル」
「何かな」
「――もう今後一切、俺に関わるんじゃねぇ」
言うとリドルは笑みをまた深めて、演技染みたように首を傾げて軽く頬杖をつく。
「それはまたいきなりだけれど、いったいどうかした?」
「お前が俺につきまとうから!変な噂が立ってんだよ!」
「へえ…例えば?」
グッ、と思わず言葉に詰まるが、なんとか堪えた。
「お、れとお前が、…付き、合ってる、とか」
言うとリドルは、目を見開いたまま俺を凝視した。
――ほら見やがれ!
お前がなんで俺につきまとってんのかは知らねぇがなぁ!
余計なことは、余計なことを生むんだよバカ野郎!
「……まあ、そうすれば煩わしい女達も寄ってこなくなるかな、とね」
「テメェ、確信犯かよ?!…ん?つうか、ならなんで今驚いてたんだよ?」
「…いや、それは…」
すると後ろのほうから、キャア!と女のかん高い声が聞こえたから、リドルの胸ぐらを掴んだままで振り返る。
「ほらやっぱり名前君×トムだったでしょう?」
「でも名前君、意外と可愛いし…」
「それ分かるわ!あのギャップがたまらないのよ!」
「それにもしかしたらトムだって、あの笑顔のまま実はサディスティックなことを言うかもしれないわ…!」
キャアキャアと盛り上がる女共を見たまま、ガクガクとリドルの胸ぐらをつかんだ手が震える。
「な、な、な、」
「あれは流石に心外だよね」
するとリドルは俺を見あげてにっこりと笑った。
「リドル×名前だよね」
「――リドルゥアアア!テメっ、テメェはそんな噂が流れてもいいのかよ…?!」
「ああ、ニホンじゃあんまり公にされてないだろうけど、僕らの国じゃあ結構居るよ、実際、ホグワーツ内にもね」
「…?!」
マ、マジかよ…いや、俺はそこらへんは父さんたちで慣れてるから、別に差別とかはねぇし、そんなん個人の自由だと思ってる…けど、ホグワーツ内にもいたのか。
…つうか、なんでコイツは知ってんだよ。
「それに大体、名前は恋人が欲しいとかは無いんだろう?なら特に問題はないじゃないか。君がよくつるんでる彼らだって、寛容に見えるけど」
「それとこれとは違うだろうが、もし恋人が欲しくなったときとか、どうすんだよ」
「――オブリビエイトは?」
「忘却呪文つかえってか!」
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