「お前らのありがたみがよぉく分かった気がする…」
「どうしたんだよ名前、珍しくしおらし、」
「とでも言うと思ったかこの野郎…!」
中庭が見える場所の壁に背を預け、項垂れながら言った俺に反応したルイの首に腕を回して、ギリギリと絞める。
「ぐぐぐ、ギブギブ…!」
「お前らはなぁ、簡単に騙されすぎなんだよ…!グレッグ、スコッティー、お前らも来い、首絞めてやるからよ」
「だ、誰もいかないよそんなこと言われて…!」
「ハァ…どうしたんだよ?」
スコッティーが頭をかきながら言う。
「どうした、だぁ…?――リドルのことだよ!リドルの!お前ら俺がアイツのこと嫌いだっつってたの知ってただろうが!」
「ゲホッ……でもよぉ、アイツ普通にいい奴じゃん」
「それがアイツの技――」
ねえ、名前。
後ろから聞こえた柔らかい声に、俺はぎりっと眉を寄せ、ギギギギギとゆっくりと固く、後ろを向いた。
「悪いね、お話のところを邪魔してしまって」
「邪魔だと思ってんなら今すぐ立ち去…!ムグッ!」
すると口元を手でおさえられ、眉を寄せながら見あげると犯人はスコッティーで。
「ムゴ、モガガ、ムグ!」
「名前、ちょっとでいいから、お、大人しくしててよ」
ふざけんな!と、スコッティーに加担しやがったグレッグを睨みつける。
と、ルイとリドルが何やら勝手に話していた。
「ああ、そういうこと!ホグワーツを代表する二人なら簡単に終わるよ、きっと」
「じゃあ、名前を借りてもいいのかな?」
「もちろん!名前ってば口悪いけど、誤解しないであげてねぇ」
「大丈夫さ、名前が優しいってことは、少し話したらすぐに分かるよ」
ルイが笑顔でこっちを振り返ったかと思えば、スコッティーはいきなり俺を離し、なおかつ突き飛ばしやがった。
そしてそんな俺を受けとめたのは、あのリドル。
「テメェ…」
「名前、僕、さっき先生に手伝いを頼まれてね。でも一人じゃ大変そうだから、もう一人助っ人が必要なんだ」
「…おい、待てよ、まさか」
「さすがだね、のみこみが早いや。――ということで、ありがとう、名前」
「ふざけんじゃねぇ!俺はなぁ、これから……そうだ、ルイたちと」
「ふふ、もう居ないよ?」
は?とリドルの言葉を受けて振り返れば、もうそこにルイたちの姿は無く…――。
あいつら…後でぜってぇタラントアレグラしてやる…。
しかも場所は大広間か…それか授業中だ、このやろう。
「いや俺には本当ムリですいつもみたいにイタズラ満載の薬草つくるぞコラァってことで俺は帰、」
「まあ待ちなさい、お前が有能なことはわかってる。ただそれがおかしな方向に行かないかどうかが問題なだけで、今はトムもいる。きちんとお前を見張ると約束もしてくれたしな」
結局、ちゃんと作業して早く終わらせるのが一番だと気づいた俺は、テスト勉強よりも真面目に作業を進め、終わらせた。
そしたら先生にスゲェ褒められた、リドルにもスゲェ褒められた。
お前らにもタラントアレグラしてやろうか。
「ねえ名前、どこ行くの?」
「うるせぇな、お前に関係ねぇだろ」
そうして手伝いが終わったとき、既に午後一限の授業が始まっている時間帯で。
口利きはちゃんとしておくって送り出されたけど、疲れたから、サボる。
――廊下の脇に立っている兵士の置物の、手にした剣を下に少し引っ張る。
すると左右に開く、兵士の後ろの壁。
現れる道の先には淡い光。
「…へぇ、名前って色々知ってるね、さすがホグワーツ中にイタズラ仕掛けるだけある」
俺はリドルのことは別に見ねぇで、その道のなかを歩いていった。
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