「………………」
「名前、食事のときはテーブルに肘を、」
「おい、テメェ」
「どうしたんだい?」
「なんで、俺が、お前と、飯を食わなきゃなんねぇんだ」
テーブルに頬杖をついて、ギリギリと眉を寄せながら、スプーンをリドルに向ける。
大体、違う寮のテーブルで食べるのは…ま、禁止されてはねぇけど。
と、リドルは偽物:本物が6:4くらいの笑顔を見せて、少し首を傾げた。
「名前、スプーンを人に向けるのもダメだよ」
ギリ…!と眉が寄る。
そしてバン!とテーブルを叩くと俺は立ちあがり――
「おーい、名前ー」
「失礼なことすんなよー」
「そうそう、仲よくなー」
違うテーブルの、少し離れたところから声を伸ばして言ってくる、つるむメンツ。
にこやかに笑って手を振るリドルは、ついさっき、お得意の技でアイツらをオとした。
「さっきの実験で一緒にさせてもらって、そこから(中略)君たちも、クディッチの試合、スリザリンの立場から見ても圧巻で(中略)仲よくさせてもらっていいかな」
おい、とか、ちょ、とか、待て、とか言ってる間に、リドルとアイツらは話を弾ませ、結局俺はリドルと昼飯を食っている。
「って、納得出来るか!」
「はは、名前は本当におもしろいなあ、飽きない」
「………………」
にっこりと笑ったリドルに眉を寄せて、そしてまた椅子にドカッと座って頬杖をつく。
「言っとくけど、俺はお前の玩具じゃねぇからな」
「わかってるよ」
「……」
「って答えておいたほうが良いから、そう言っておく」
「っ、テメェは…!さっき俺に、一言多いっつったけど、そっくりそのま…!」
「それより名前、」
「………………っ、ハァ…」
もう、ダメだ、やめろ、諦め…るわけじゃねぇ、ただこいつをまともに相手するな。
疲れる…つうか、疲れさせられてる…って、そう考えたらムカつくなオイ…!
「名前、ニンジン嫌いなのかい?」
にっこりと笑うリドルに、偽物云々は置いておくとしても、何故だかイラッときた。
「皿のうえ、残ってるから」
「…キライだけど、それがどうかしたかよ」
「ううん、ただ――子供みたいで、可愛いなって」
ブチッ、何かが切れるような音がした、が、無視して眉を寄せ、口元をひくつかせながら笑いリドルを見る。
「今なんつったのかなぁ?リドルくん」
「名前知らないかな、子供のキライな食べ物は、ニンジン、ピーマン、玉ねぎ、って相場が決まってるんだよ」
「ハハハ、リドル君ってばふるーい、今のガキはもっと違うもんが嫌いなんだよ」
「そう、じゃあつまり名前も含めて僕達が小さい頃にキライだったのは、ニンジン、ピーマン、玉ねぎだ」
そうしてリドルは笑う。
「成長していないんだね、名前の味覚、可愛いな」
――ブチッと切れた、確実に、俺の頭んなかで何かが。
「イイ度胸じゃねぇか、ナメんじゃねぇぞクソ野郎…!」
カチ!とニンジンを貫通したフォークが音を立てる。
そのままフォークの先を口の中につっこんだ。
ニンジンを咀嚼する。
クソが、ふざけやがって、何が玩具じゃねえだ。
子供とか可愛いとか言われて、怒らねぇ男がいるかよ!
無理矢理にニンジンを飲みこんで、水を喉に流しこむ。
カンッとコップをテーブルの上に乗せて、口元を手でおおって下を向いた。
――すると、頭に、何かが優しく乗せられる。
「よく出来ました、だね」
リドルが、俺の頭を撫でていた。
「っ、ガキ扱いすんじゃねぇええっ!クソ野郎…!」
111002