恋い焦がれた太陽 | ナノ
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休日の昼間、壁にクッションを置いてそこに背中を預け、胡座をかいて本を読む。

そんな俺の前にリドルが座ったかと思えば、


「名前――キス、したい」


開口一番に言った言葉に、俺はバッとリドルを見た。

リドルはそんな俺に笑うと、俺の髪に指を通して、少し首を傾ける。


「だって、ねえ、僕たち恋人だよ…?恋人どうしがして、別に変な行為じゃないと思うんだけれど」
「つ、つうか、恋人どうし以外がする方が、おか、おかしいっつうの」


つっかかりながら言った俺にリドルがまたクスリと笑う。


「よかった、名前の考えが同じで…――それで…キス…していいかい…?」


微笑みながら言うリドルに、俺は頬の熱を感じながら、少し下を向く。


「べ、別に聞かなくても…」
「うん、でもね名前、聞かないでキスをしたら、自分だけが推し進めてるみたいで、少し不安…かもしれないんだ」


不安、という言葉に少し驚きつつリドルを見上げれば、リドルは苦笑いや、困ったように見えるように笑って。


――例えば俺が、リドルに、キ、キスしていいか聞いたとして…それでリドルが頷いてくれたなら、スゲェ、嬉しいよな…。
逆に何も聞かねぇで…キス、したら…確かに一方的な気がする、な…気持ち的にも。


瞬きを数回してから、恐る恐るとリドルを見上げる。
するとリドルが微笑みながら嬉しそうに目を細めたのを見て、俺は跳ねた心臓に促されるようにまた下を向いた。


待て…待て待て待て…!
リドルの質問にちゃんと応えた方がいいのは、分かったけど…どう、答えれば…。
――おう…とかは、よく分かんねぇけど、違う、よな…?
大体、そんな、ただ応えるだけなんて女々しいこと…。
そうだ、俺だって、心の中ではちゃんと思ってんだから、それを伝えればいいんだっつうの!

男だろ、名前!


と、脳内で自己完結、並びに自己を叱咤した俺は、その勢いのままリドルを見上げた。
けど目を丸くしたリドルを見て、ジワジワと、頬が熱くなってくる。


「リ、リド、ル」
「名前…?」
「お…――俺も、キス、したい…リドル、と…」












「――ってちょっと名前、言葉と行動が一致してないんだけど――ああもう、あんまり可愛いことしないでよ」


――俺はリドルの質問にこたえた後、直ぐに背中のクッションを掴んで前に持ってくると抱きしめて上半身を屈ませて、おまけに顔もクッションにうずめた。


「もう…目眩でも起こしそうだ…」


リドルの言葉に軽く疑問符を飛ばしたくなりながらも、俺は、自分を脳内で再び叱咤することに忙しかった。


あ、あり得ねぇ、俺…!
男のくせに、情けねぇ…!


「つうか、相手がお前だから、リドル!」


自分でもわけの分からない言葉の流れだとは思った。

げんにリドルも、俺がいきなり顔を上げたことに少し驚いて、そして首を傾げる。


「例えば俺が、女と付き合って、キスするとしたら…!」
「待って名前、そんなあり得ない例え話はやめよう。――ね?」


久しぶりの、というか初めてじゃないかというリドルの、魔王の笑顔に、俺は唾を飲んでから無言でぎこちなく頷いた。


「お、俺が言いたいのはつまり、自分から…キス、するなら俺はこんなに焦らねぇ!…はず、だから…!――俺から、キス、する」


――言い切った俺に、リドルは表情を特に崩さず(魔王フィルターは消えていた)


「それはあり得ないよ」
「ハァ?!」
「だって名前は、どう考えてもされる側…というかまあ、受ける側だから」
「…ハァ?!」
「誰に聞いたって、全員が全員、そう言うと思うよ」


その言葉に反論しようとした俺は、けれどリドルが笑顔のまま顔を寄せたから、思わず言葉を詰まらせた。


「名前からキスしてくれるなんて素敵な申し出は、また今度受けとりたいな」


リドルの指が、俺の頬を優しく撫でて。


「答えはさっき、受け取ったから――キス、するよ」


リドルの額が俺の額にあたって――目を閉じれば、唇が重なった。


「――ふふ、ねえ、名前」
「…、…なに」


――唇が離れて、けど額を合わせた距離のまま笑うリドルに、恥ずかしくて頬の熱さを感じたまま目を伏せる。


「キスって、いいね」


また頬の熱が、上がる。


「ねえ、またしていい?」


リドルの問いに息をのんでから、俺は視線を泳がせて、そして、目を閉じた。






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