「それより、ねえ、名前。――ベッド、戻していい?」
にっこりと笑顔のまま聞いてきたリドルの言葉に、俺はまた、思わず押し黙った。
「修復呪文で、ねえ?」
「…、……、」
「僕としては、このシングルになったベッドで名前と一緒に寝ても良いんだよ?というかそっちの方が密着」
「ダブルで!」
――そうして結局、ベッドはまた一つに戻って、それぞれ風呂に入ったりして――少し緊張…っつうか警戒…?をしながら、俺は洗面所からのドアをゆっくりと開いた。
そしたら、もう部屋の電気は消えていて、ベッドの傍のテーブルの、小さなライトスタンドだけが点いていて。
その薄暗い灯りがほのかに照らすベッドには、既にリドルが寝ていた。
歩いて行くと、その目はもう閉じられているのが分かる。
教授の助手っつうか、付き添いでホグワーツ外に、か…。
どうせまたコイツ、猫かぶってなんでもやったんだろうな、多分要求されたことのほとんどは、こなせるだろうし。
…だから疲れんじゃねぇのかよ、バーカ。
ライトスタンドを消して、布団の中に入る。
足を入れて、身体を入れて、リドルに背中を向けるように横になって。
――あったけぇ…。
布団の中はもう、ぬくぬくとしてて、風呂上がりの自分の匂いと、そしてリドルの匂いが微かにする。
静かに少し息をついて、俺は目を閉じた。
「――ぎゃ、…!」
そして、直ぐに肩を揺らして起き上がり、その勢いのままリドルを振り返った。
「テ、メェ何すん…!つうか寝てたんじゃねえのかよ!」
「寝ていないよ、寂しがってた名前を抱きしめようと僕は嬉々として」
「嬉々としなくていいっつうの!馬鹿!」
リドルは寝ていると思っていた中での、後ろから首に回ってきた手の驚きの威力は、意外に中々だった。
――俺はそんな首裏を触りながら、
「つうか、大丈夫だ」
「…?」
首を傾げるリドル、というかリドルが寝転がっている場所を、指差した。
「そこに居るなら…大丈夫っつうか…別に、良い」
目を少し見張ったままじっと見てくるリドルに、俺は眉を寄せて首を少し傾げる。
「なんだよ…?」
「…名前、生殺しって言葉、知ってる?」
「ハァ……?」
「あと、すごいこと言ってるって、気がついてる?」
「…、あ…?」
「名前の馬鹿、鈍感」
「んだと…!って、おい!こっち来んな!」
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