「――これでよし」
リドルが居ない二日目の夜、授業やら何やらを終えて部屋に帰ってきた俺は、大きな一つのベッドを真ん中から魔法で真っ二つにした。
そしてシングルになったベッドを見ながら、腕を組んで一人で頷く。
――ダブル以上のベッドで一人で寝れば、そりゃ熱がこもるのも伝わるのも遅い。
だから、寒かったんだ。
それに、リドルの居ねぇこの機会は、ベッドを二つにするチャンス…だし。
「ふわぁ、…風呂」
とにもかくにも、これで今日はよく眠れる。
「――…眠れねぇ」
――ベッドの上、まだ冷てぇ布団にくるまって一人呟く。
シングルサイズのベッドだから、当然昨日の夜よりはだんだん、暖かくなってきてるけど…寝れねぇ。
…わけ、分かんねぇ。
今日はクディッチの練習もあったし、いつもよりも疲れてる方…な筈、なのに。
いつも後ろから首に回される手が無い状態が、逆にこう…ムズムズする、というか。
「――、」
はた、と一人、布団の中で止まった。
「――やべぇ」
肩ら辺にあった布団を、顎の辺りまで引っ張り上げて、身体を丸める。
心臓の辺りまでムズムズとした気がした。
――俺、慣れてる。
リドルと一緒に寝ることに慣れて…それで、そのことが当たり前…みてぇになってて…寝れねぇ…。
「…やべぇ」
駄目だろ、こんなんじゃ。
…多分。
「――ふわ…あー、くそ」
――今日何度目かはもう分からない欠伸が、部屋までの帰路の中でまた出る。
涙が浮かんだ目を擦りながら、身体を支配する眠気とだるさに息をついた。
そういえば、リドルは今日帰ってくんだった…よな。
ま、でも飯の時とかはまだ見なかったし、帰ってきてねぇのかな。
「って、リ、ドル」
そうして部屋の前に着いてドアを開けると、二つになったベッドの内の一つに、こっちに背を向ける状態で座っているリドルが居て、思わず驚きから言葉がつっかえた。
リドルは立ち上がると、少しうつ向いたままこっちへ歩いてきて、俺の腕を掴む。
「お、い…?」
そうして少し強く掴んだまま引っ張ってくるから、眉が寄るし足がもつれる。
「テメェ、何す…!」
そしたら一度強く引かれて、そのままベッドに両手首を押しつけられて。
「…っ」
「名前、何、これ」
「お、い、リドル、」
「どうしてベッドが、二つになってるの」
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