「名前」
「あー?…ってお前、どうしたんだよ」
スリザリンとの練習試合で負った怪我も治ってきたとある日の夜、部屋に帰ってきたリドルが不機嫌なツラをしてたから、眉を寄せて少し首を傾げた。
「実は、魔法薬学の教授に頼まれたから、明日から二日、ホグワーツ外の仕事の付き添いに行かなきゃいけなくなった」
「…………へえ」
「……何その微妙な反応」
「いや、だって…別にお前、前からそういうことやってただろ」
たとえ場所がホグワーツ外に広がるとしても、ホグワーツの中で猫をかぶっていて、尚且つ能力が高いこいつを、助手として仕事に連れて行きたい教授らは多い。
「確かに、別に今まではよかったよ…めんどくさいとは、思ってたけど」
「…?」
「でも今は、せっかく名前と住んでるのに…しかも、二日だ」
「…、…いや、あー」
「二日も名前に会えない」
いたって真面目な顔で、ローブを脱ぎながら言うリドルから、会話から逃げるように、俺は小説を手に取って、視線を文字の列に移した。
「二日はこの広いベッドを一人で堪能出来るんだな」
「…………」
――この広いベッドを一人で堪能出来るっつった本心は、別に嘘じゃねえ。
ダブルよりもデケェこのベッドで、いつもリドルは、余計にくっついてくるから、大きさとか関係なくなってるし。
だから…そう、嘘じゃねえ。
…嘘じゃ、ねえ…けど。
「…一人じゃデカすぎんだよ、馬鹿リドル」
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