恋い焦がれた太陽 | ナノ
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「お、おい…」
「よかった、名前、…よかった…」


ぎゅうぎゅうと抱きしめてくるリドルの肩に手をおいて、離そうかとも考える。

けど、リドルの手が、震えているから。

俺もなんだか、離すことが出来なくて。


「他の生徒達が騒いでるから何かと思えば、名前のことで持ちきりで…」
「は…もう回ってんのかよ」
「うん、それで、聞いてみたら名前が…ハァ、スリザリンとの練習試合中に頭にブラッジャーが激突して、意識不明の重体だって言うから…」


リドルの言葉に、俺はおよそ三秒くらい固まってから、そうして我に返った。


「いや、それは…流石にどこかの時点で誇張されてる」
「違うの?」
「まあ、ブラッジャーは当たったけど…咄嗟に少しかわしたから、激突じゃねぇ」
「…………」
「それに、確かに目ぇ覚めたのはついさっきだけど、意識不明の重体ってほどじゃねぇからな」
「大体合ってるじゃないか…!」


そうして顔を上げたリドルは俺の顔をジッと見ると、またくしゃりと顔を歪めた。


「でも、本当に…よかった…目が覚めて…」
「…、……おう」
「――それで、名前」
「あ…?」
「誰 に や ら れ た の?」


――最近じゃあもう、こいつは俺の前ならまったく、あの偽物の笑顔は出さない。
他の奴らには変わらず、まだ猫かぶってるみてぇだけど。
――けど、今のこいつの笑顔は、偽物じゃねぇが…なんつうか、そう、まさに魔王みてぇな恐さを持ってて。

地鳴りのような低い音が背景に聞こえてそうなその笑顔に、俺は顔をひきつらせて、無意識の内に口を開いた。


「だ、誰でもねぇ」
「嘘、スリザリンの、誰?」
「…い、言ったらお前、どうするんだよ」


リドルはにっこりと笑う。


「社会的に抹殺する」
「いや…馬鹿か!抹殺…つうか社会的に?!」
「そうだよ、まずは社会的に抹殺してから存分に痛めつけるんだ。死んだ者なら誰も探しはしないから、気にせずにやれるだろう?」
「馬鹿!お前、馬鹿!」
「大丈夫だよ、ちゃんと最後には、社会的に抹殺じゃなくて、抹殺するから」
「何が大丈夫?!…痛っ」


そしたら、声を少し上げすぎたからか傷の部分に痛みが走って顔を歪める。

リドルが途端に心配そうな顔になって、俺の頭に優しく触れた。


「大丈夫?名前」
「痛つつ…あー、大丈夫」
「ハァ…こういうときはあまり、強がらないでね」


そう言うと俺の頭を撫でるリドルの手があまりにも優しくて、自然と目元が緩む。

そんな俺を見て、リドルがひどく優しい顔になった。










「――よし、もう帰る」
「え…部屋に、かい?保健室に居た方がいいんじゃないのかな、まあ僕は名前と一緒に居たいけど」
「…お前、一言多い。――ここで一晩過ごすより、自分の部屋の方が絶対にいい」
「そっか、――名前も僕と一緒に居たいんだね、嬉しいな」
「お前耳取り替えてこいよ」


――ベッドから起きあがる時に少し目眩がして、床に足をつくと少しだけ傷が痛んだ。
けど特にそれだけだから、帰ろうとリドルと歩き出す。


「――でも、名前が言わなくても大体分かると思うんだよね、僕は」
「…?」
「抹殺したい奴ら」
「お前…まだ言ってんのか」
「当たり前だよ。――名前がいつも一緒に居る彼らの姿を探せば、直ぐにスリザリンの誰か、分かりそうだ」


その言葉に、さっきの、絆創膏やらをしたルイ達の姿が思い出される。


「アイツらも喧嘩っ早いし…今ももしかしたら喧嘩ふっかけてるかもな…確かに」
「よし、僕も行ってくるよ」


方向転換しようとしたこいつのローブを掴む。


「お前は駄目だ、ルイ達と違って、喧嘩じゃおさまりそうにねぇ」
「…ハァ、名前につかまれたら、行けないじゃないか」
「だから、行かなくていいっつってんだろ」


――俺は諦めて息をついた。


「スリザリンの何人かに、俺らを目の敵みてぇにしてる奴らが居るんだよ」
「そうなの?」
「ああ、――まあ、勝手に向こうが色々言ったり、やったりしてるだけだけど」
「ふうん、そう…そっか」
「…おい、何もすんなよ」






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