――名前・名字は、僕の偽りを見破って、尚且つ実力もある、危険人物。
…けど、そこから想像する人物像とはまるで違った。
口調が悪いのは知っていた。
僕が取り繕っているということに特に関心は持たずに、誰かに話そうとする性格じゃないのは、助かった。
まあそれでも簡単に、目を離すわけにはいかなかったし、なによりその存在自体が、おもしろいものだった。
だから一緒に居るようになって、そうして気づいたのは、僕の偽りに気づいているとかそんな理由を抜きにして、ただ名前だけでも面白いってこと。
ちょっとからかうと、直ぐにノってくる。
そのムキになって対抗してくるのが、子供っぽい。
ぶっきらぼうな口調で突き放すのかと思ったら、お人好し――優しい。
態度は大きくて、まぁちゃんと実力もともなってるんだけど、そのくせ力が弱い、背が僕より低くて、見あげて睨んでくるのは本当に、かわい…
「――――……」
って、ちょっと待て。
僕はいま、なんて言おうとした。
言おうとしたっていうか、考えたっていうか、――どんな感情を抱いた…?
無意識のうちに、自身の胸に手をやるとその内側は、なんだかくすぐったいような、もやもやするような、――そしてそれでいてどこかあったかい。
いままでの人生で初めての感情に、混乱する。
――僕は選ばれた人間だ。
だから周りの人間なんて視界にうつっても、特に認識はしない。
ダンブルドアは、危ないというか注意しなきゃと思うけど、僕にとってほかのやつは、人間じゃない。
――でも、名前が現れた。
僕が誰かにおもしろいとか、とにかく何かしら感情を抱いていた時点で、ほかのやつらとは全然、違ったんだ。
「おいリドル、もうすぐ行くぞ」
――夏休みも終わって、ホグワーツにもどる。
今までほとんどを名前と過ごしていたのが、名前はルイ・ヴィトたちと過ごすことになる。
名前がルイ・ヴィトたちといつものように話す光景が頭の中に浮かんで、何故だかイラッとして、歯を結ぶ。
「…そうだね、行こうか」
この感情は――。
111003