「――父さん、ただいま」
「おかえり名前っ!」
「おかえり、…おや」
「はじめまして、名前とは仲良くさせてもらってます、トム・マールヴォロ・リドルです」
玄関に出迎えにきてくれた父さんたちに、リドルがいつもの社交辞令スマイルをお見舞いする。
けど俺が気になったことはそれじゃねぇ。
「仲よ…いてぇ!」
仲良くさせてもらってます…?と、仲良く、の部分がひっじょうに不思議で言いかけたとき、リドルが俺の足を思いっきり踏んだ。
俺達の荷物を持ってくれ家に入ろうとしていた父さんたちが不思議そうに振り返る。
「大丈夫かい、名前」
「テメェ何すん…!」
リドルに吠えようとして、けど、とまった。
父さんたちが、笑ったから。
「本当に仲が良いんだね、嬉しいなぁ」
「…これからも名前と仲良くしてやってくれ、リドル君」
「透明マント、か…名前、君はよくこんなに色々と面白いものを見つけてくるね」
俺の透明マントを興味ありげに眺めていたリドルが、自分の首から下にそれを巻く。
首から上だけが存在しているさまは、自分やらルイたちやらで見慣れてる筈だけど、相変わらずキモかった。
「ま、見つけてきたっつうか、勝手に模造したんだけどな。お前の言うとおり、色々と使えそうだし」
「模造?本物があるんだ」
「ああ、なんだか家の家宝だったな」
「全然分からないよ」
「家宝っつう情報が得られただろ」
リドルがため息をついた、俺は苛ついた。
「なるほど、だから汽車から降りてても、毎年誰も気づかなかったんだ。でもわざわざ途中じゃなくても、どこかの駅からここまで飛んでくればいいじゃないか」
「そんなのめんどくせぇし、…それに、一年の時にそうしたら、着いてこようとしたやつらがちらほら…」
「ああ、まあきみ、人気者だからね」
流れるように透明マントをたたんだリドルは、俺を見て
「連れてこないのは、君の父親のため?」
「……へんに傷つけることになるのは、嫌だしな」
「…そうだよね、げんにこうして、周りに何もない場所に家を建てて暮らして――」
「いや、その理由は…まあそれも当たりだとは思うけど第一に、…」
「…第一に?」
「だ、誰にも邪魔されたくねぇ、らしい」
「…………」
「……」
「…うん」
「……なんか、わりぃ」
111003