「テメェら、用意は良いか」
「バッチリです!」
「準備万端アル!」
警視庁の前、万事屋の三人が並んで、その高い建物を真っ直ぐに見る。
「おお?金時じゃなか?」
「あ…?って辰馬か、ンでお前こんなところに…」
「――というわけだ…多々おかしい点、気になる点があるからな。それはこれから調べる必要がある。 そういえば銀時、」
「あ?」
「近々、坂本が地球に来ると文で連絡がきていたぞ」
「どうでもいい!」
「そういやヅラが言ってたな…つうか、銀時だっつってんだろ、ったく」
「いやあ、久しぶりじゃのう…ところでお前さんら、またお前さんらにはちと似つかわん、珍しいとこで会うたもんじゃ」
笑いながら言う辰馬に、神楽が両手で握り拳をつくりガッツポーズする。
「名前に会いに来たネ!」
「名前に?そりゃ奇遇じゃのう、わしも同じじゃ」
「え、坂本さんも名前さんに会いに?」
「おお、名前が幕府に勤めていると知ったんは最近じゃけん、前の商いのときは名前に会えんかった」
銀時が真面目な表情で、辰馬の肩を掴む。
「ちょうどいいぜ、おい辰馬、お前も作戦に参加しろ」
首を傾げた辰馬に、銀時は再び、警視庁を見た。
「あの嘘吐きを、引きずり寄せる」
「――ぎ、銀さん、なんだかおかしくないですか…受付にも人っ子一人居ませんよ」
「…おい辰馬、いつもこうなってるわけじゃ、ねえよな」
「当たり前じゃ…何があったんやら、おかしいのう」
――建物の中に入ると、その綺麗な建物の中はシーンとしていて、銀時らの靴音だけが高い天井に反射し響く。
受付にも人が見当たらない中、少し遠くから神楽が
「銀ちゃん、この部屋の中から声がするアル!」
その神楽の言葉に、一同は部屋の前に向かう。
そして、知らない場所、勝手に入ってきた場所ながらもノックもせずにドアを開けるのが、この一同というもので。
「――核ハ既二、我々ノ手中ニアリ」
――するとまず先に飛び込んできたのは、変声器で変えられた、違和感にまみれた声。
その声が、大きく広い部屋の中に響いていて。
「核、だと?」
眉を寄せて銀時が見る、部屋の前には大きなモニター。
そしてその画面に映る、笑った面をつけた人物。
その人物から、そして部屋の空気から、すべてが異様に包まれていて。
「我々攘夷浪士二核ヲ起動サセラレ、江戸ヲ、コノ国ヲ消サレタクナクバ」
「ぎ、銀さん」
「何アルか、これ…!」
「どうやらとんでもない時に来てしまったらしいのお」
ざわざわとする部屋の中、銀時は、その大勢の人の中で名前の姿を見つけた。
背筋を伸ばし、真っ直ぐにモニターを見つめる名前の目は少し細められている。
その周りとは違う、落ち着き払った様子に銀時は少し眉を寄せる。
「指定スル人物ヲ今日ノ正午丁度二、湾ノ上空二在ル船二送レ」
更に部屋の中がざわめく。
「ソノ人物ノ名ハ、――名字名前」
銀時らは目を見開く。
部屋の中の者達は驚き、そうして名前を振り返る。
けれど名前は変わらず、モニターを見つめていた。
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