――見慣れた銀色、もうずっと昔…小さいころからずっと、一緒に歩いてきた、――生きつづけてきた、銀色。
「――さっちゃんは放っておいていいのかい?そっちから来たってことは、居ただろう?足から血を流し、気絶したさっちゃんが」
神楽たちが驚く。
けれど銀時は変わらず口角を上げながら、私へと向かって歩いてくる。
「心配いらねえよ、あいつはヅラに任せてきた」
――銀時と同じ…昔から聞きなれた名に、眉を寄せる。
月詠が顔を歪めて腹をおさえながら立ち上がり、銀時の隣に向かう。
神楽や新八、晴太も、その後ろに向かった。
――その姿を見て、うつむき、吐き捨てるように笑う。
もう、十分じゃないか…。
生き、続いていく人生を、並んで歩いていく人間は、もう十分、みんなには居る…。
「名前にやられたのか、その腹」
「…!銀時、ぬし…!名前が戦えることを知っていたのか…?!」
「まあな。――あいつとは、長い付き合いだ」
だから私ひとりくらい、枠から出せば良いだろう。
「過去なんてもう、どこにも無いのにね」
嘲笑いながらそう言えば、月詠が眉を寄せて、私を少し睨むように見て「なんじゃと…?」と言う。
――ああそうか、月詠の琴線は銀時にある…。
ふふ、こりゃあいいね。
銀時を蔑むようなことを言えば銀時と同時に、月詠もわたしを嫌う…。
まさに一石二鳥だ。
「確かに、過去なんてモンはもうどこにもねえ」
追撃を喰らわそうとしたとき、銀時がそう言って。
私は口を閉じ、月詠は不満がうかがえる。
「けどな、俺の体のいたるところに、あの時の傷は残ってんだよ」
――攘夷、時代。
「確かに過去は、どこにもねえよ。お前は昔からそう言ってたから、理屈はわかってるつもりだ。お前から言わせりゃ、傷だって」
「今日、出来たかもしれない。過去についた傷だという、薄っぺらな記憶を付属につけられてね」
「はっ、否定はしねぇさ」
笑った銀時が、真っ直ぐにわたしを見た。
「けど、これらの怪我を見て沸く感情――自分の怪我じゃねえのに痛そうな顔しながら手当てしてくるお前は、笑えて、そして大切だ。それにお前は怪我が嫌いで、ほとんどはしてこなかった。安心してた。――こいつらは、過去のもんじゃなくて、確かに『いま』も思い出して、俺が感じてるもんだ…!」
――銀時が、言い放った。
私は、見えないところ――歯を食いしばり、袖に隠れた手を握りしめる。
「私も、ややこしいことはよく分かんないけど、今!名前が大好きヨ!」
――まるで、呪いだ…。
「僕も、――今!名前さんと離れたくないって、思ってます」
切ろうとしても…切っても切っても、きれないつながり。
「おいら達は、名前姉が大切なんだ!!」
幸せの呪い。
110923.