微笑む嘘吐き | ナノ
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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「逃げるだけの弱い女に、興味は無いよ」


私は思った。
この男は、私を殺すんだろうか。
私は思った。
この男に殺される方が、きっと痛くないだろうな。

私はそう思い、そして少し、微笑んだ。



よかった。
痛いのはイヤだから。
――よかった。



にっこりと笑みを浮かべたまま腕を振りかざしている男。
私は静かに目を閉じて――




「――あり?」


ざ、あっ…!と。
風が起こって髪が後ろへと靡いた。
けれど何時まで経っても来ない痛み。

少し眉を寄せて、静かに瞼を上げた。


「おかしいね、君は今、逃げないのかい?」
「…………」
「怖くて体が動かないって訳でもなさそうだし…――死にたいの?」


笑顔の男は、私の顔の直ぐ前に突き出していた拳を戻して首を傾げた。

私はその笑顔を見て、うっすらと微笑む。


「死にたいって言ったら、殺してくれるの?」


男の口元が、にいっとつり上がった。
そして弧を描いていた目が開かれる。

透き通るような青色の瞳。


髪の色も、目の色も。
神楽と同じ配色だ。
もしかしたら彼は、神楽と何か関係があるのかもしれないな。
人常ならざる強さもあるみたいだし。

まあ、私に関係ないけれど。


「それに君は、殺す時には笑顔で殺してくれるみたいだしね」
「…うん、確かにね。当たってるよ。でもそれが何で良いのかな?」
「だって、自分が死んで、周りの人が無反応か、いっそのこと笑っていた方が、私はいい」


あなたが生まれた時、
あなたは泣いて、
周りは笑っていたでしょう

だからあなたが死ぬ時は、
周りは泣いて、
あなたは笑っていられるように、生きなさい


「こんな言葉もあるけれど、私は違うね。ひっそりと、誰にも気づかれないままに…」
「死にたいの?」
「…そう言ったら、殺してくれるの?」
「ふふ、」
「…ふふ、」


何だろう、これは。
まあでも、もし私が死にたいと言っても、どうやら彼は私を殺してはくれないようだ。


私はポケットから携帯を取り出す。
松平さんへのメールを作成し始めると、彼が不思議そうに携帯を覗き込んできた。


「何してるの?」
「上司にメールだよ。君が殺したこの男は脱獄した死刑囚なんだ。今街には彼の手配書で溢れているよ」
「もう死んじゃったけどね」


彼を見ると、にこりと笑いながら「ん?」と首を傾げた。


君が殺したんだけどな…。


なんて、まあそんな言葉は飲み込んでメールを送信する。
無事届いたと表示された画面を確認して携帯を閉じる。


「上司に報告ってことは、お姉さん、警察とか?」
「いいや、違うよ」
「じゃあ、何?」
「さあ、何だろうね」
「誤魔化さないでよ。知りたいんだ。――宇宙海賊春雨って知ってる?」


彼を見上げる。
いつの間にか、あの透き通った青い瞳が見えていた。


「俺はそれの第七師団長の神威。江戸との密約、君がやってよ」







110416.