微笑む嘘吐き | ナノ
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「#寸止め」のBL小説を読む
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「なんだと?!名前、もう一度言ってみろ!」
「だから、小太郎には悪いけど私は幕府機関で働いてるから、って」
「幕府…しかも機関とは、直属ではないか!」
「そうだね」
「ぬおお…!お前は俺と共に刀を取る運命にあるというのに!」
「初耳だよ」


涙を流していた小太郎は何処へ行ったのか。
頭を抱え込み苦悩する小太郎を横目で見ながら、そう思った。


――銀時の家、まあつまり万事屋銀ちゃんの店、の居間で椅子に座り適当に話す私達。

両側に座る銀時と小太郎。
向かいに座る神楽と新八。


「しかし…直ぐに坂本の馬鹿に連絡しなくてはな」
「…辰馬か。小太郎はまだ交流があったんだね」
「ああ、エリザベスもアイツから貰った。おおそうだ、名前に紹介しなくてはな。―エリザベス」


すると壁の方に居た…エリザベスが此方に来て、右手のプレートを上げた。
その木板には「よろしく」の文字。

私は思わず頬を緩めた。


「エリザベスは可愛いね」
「!やはり名前は分かっているな、ははは!」
「ちょ、名前。お前マジでかァア?!コレだぞ、この化け…っ!」


ガァアアン!と音を立てて銀時は壁に飛んでいった。
そして今まで銀時が座っていた場所にエリザベスが来る。


「ふふ、可愛いねえ」
「名前さん…本当にそう思うんですか…名前さん、姉上の卵焼きも食べてたし…ちょっと変わってますね」
「ていうかエリーを可愛いって言うなら定春を見てヨ!もっと可愛いネ!」


そう言って神楽は立ち上がり違う部屋に行った。
数秒して戻ってきた神楽の横には――


「ワンッ!」


白くて大きな犬。
というか通常の犬のサイズを遥かに上回っている。

そしてその定春が銀時の頭に噛みついたのを見て、私は少し固まった。


「名前…お前は止めておけ。飼い主でさえあの始末だ」
「…そう、だね。きっと私は喰われるよ」
「名前、定春は可愛いアルか?」
「…うん、可愛いよ」
「じゃあ名前も此方来るネ!定春といっぱい戯れるアル」
「いや…もう定員オーバーみたいだよ」


定春に噛みつかれたままの銀時を見てそう言う。
頭から血が流れている。


あと神楽…定春の戯れるの意味、というか度合いが少し違うみたいだよ。
戯れるってもっとこう…花畑を背景に春の日差しが降り注ぐ中フリスビー、とか…。



―――ピリリリリリ



すると携帯が鳴った。
ポケットから出して通話ボタンを押し、耳にあてる。


「もしもし」
「名前!今すぐ何時もの店に来てくれ!」
「…松平さんかな」
「ああ、もう俺達だけじゃ抑えられ…ぎゃーっ!!」


ブツッと切れた通話。
最後の悲鳴が聞こえていたようで、銀時らは目を丸くし新八は顔をひきつらせている。


――ああ、何処もかしこも賑やかな世界だ…本当に。


私は少し微笑んで、立ち上がった。















「――変わらないな」
「名前のことか?」
「ああ…」


ふっ、と目を閉じて笑みを零した小太郎。
銀時もソファに背中を寄り掛からせ、笑った。

そんな二人の様子を見た新八が口を開く。


「名前さんは…大きな存在なんですね」
「それ私も思ったアル。銀ちゃんもヅラも、名前を見た時別人みたいだったヨ」
「ヅラじゃない桂だ。…だがまあそうだな、名前は大切な存在だ」


先を促すような神楽と新八の視線に、小太郎は静かに頬を緩めた。


「俺達に道を与えてくれた人が居るんだが、名前は何時でもその道を照らしてくれた。俺達が俺達の道を歩めるように、時には背中を押してくれた」
「けどよ、アイツはそれを感謝させねえ。下手すりゃこっちが気づかねえ内に、まるで当たり前のようにしやがる」


――アイツは人の荷は背負うのに自分の荷は背負わせねえんだ。

銀時は少し眉を寄せ、そう言葉を紡いだ――…。






110128.