微笑む嘘吐き | ナノ
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同僚から「電話だぜ。男から」とにやにやした顔で言われて出た電話口の向こうは、二日前に再会した銀時だった。


「よお、名前」
「銀時…なんで此処が?」
「お前真選組と居ただろ?から聞いてみた。万事屋なめんなよ?」
「ああ、万事屋銀ちゃん」


思わず笑うと銀時も笑った。
『万事屋銀ちゃん』とは、銀時が経営している何でも屋。


それにしても簡単に連絡先が漏れてしまうね。
土方さんは厳しそうだし沖田さんは嘘の情報を教えそう。
近藤さんも局長としての責任がありそうだし…万事屋銀ちゃんが好き勝手やったな。


銀時を除けばまだ短い付き合いの彼らの、予測出来すぎる行動を想像して微笑んだ。


「で、用事は?」
「ああ。ヅラに会わせてえ」
「…小太郎か。懐かしいね」
「アイツも呼んでねえ時に来るくせに居場所はよく分かんねえからな。ぶらぶら探してさっき見つけたとこだ」


まあ…指名手配犯だからね。
簡単に道中を歩いて…いや、小太郎なら歩いてそうだ。


周りのことを気にして、この言葉は飲み込んでおいた。
一応此処は幕府直属機関だから。

少し愉しそうな銀時の話を全て聞き終え、電話を切った。






――そして今、私は万事屋銀ちゃんと書かれた看板がある建物の前に立っている。

銀時の話だと小太郎に私のことは言っていないらしく、まあ所謂サプライズ。

二階の玄関の前で私を待っていた新八が下りてきた。


「名前さん」
「こんばんは新八。新八が合図役ってことかな?」
「はい。僕が玄関から銀さんを呼べば、桂さんの目を覆うようになってます」
「ふふ、そう。サプライズは私も好きだよ」


会話をしながら、万事屋銀ちゃんの店へと階段を上がっていく。
ガラガラ、と引き戸を開けて新八が「銀さーん」と声を上げた。


「――む、銀時何をする」
「いやまあちょっと大人しくしとけや」
「エリーも今は大人しくしとくヨロシ」


うわあ…懐かしい声。
それに…――エリーって、誰だろう。
まさか小太郎に外人、若しくは天人の彼女かな…。


ふうむと考え少しにやりとしながら店に入る。
新八の後に着いていき居間に入ると、にやにやしている銀時、―…小太郎の目元を手で覆っている神楽、そして…


「これについてはとりあえず無視しとけ」


白い体に黄色のくちばし。
目は丸に点の生き物。

思わず固まると銀時にそう諭され、私はぎこちなく頷き、新八の促されるままに小太郎の前に座った。


「ヅラぁ、心の準備は良いアルか?」
「ヅラじゃない桂だ。…よく分からんが、男子たるもの何時如何なる時も平静を保っているもの。大丈夫だ」
「じゃあいくヨ。――じゃじゃん!」


パッと小太郎から神楽が手を離し、少し眉を寄せている小太郎と目が合う。



「――久しぶり、小太郎」



ぽかん、と。
小太郎は目を丸くし口を半開きに開いた。


「…………名前、か…?」
「そうだよ、小太郎」
「……名前…―――」


すうっ…―――。
小太郎の目から涙が零れ落ちた。
後ろから神楽と新八の驚く声が聞こえる。

勿論私も驚いて「えっ」と声を上げた。
少し焦り慌てながら、小太郎の頬にそうっと触れる。

――吸い込まれるように、小太郎は私に抱き着いた。


「名前…名前…っ!」
「…小太郎…」
「生きて、いたのか…!」
「ああ…銀時から話は聞いたよ。…小太郎、私は、生きてる」
「…名前…!!」


涙声で名前を呼ばれる。
震えているのに、しっかりと、キツく、抱き締めてくる。


「――ちょ、ちょっと銀さん!桂さん、な、泣いちゃいましたよ?!」
「ヅラ…泣いてるアル」
「良いんだよ、こうなることは分かってた」


万事屋三人の会話が聞こえて、小太郎越しに三人を見る。

驚いた表情の神楽と新八とは反対に、銀時は目を細めて笑っていた。

私も苦笑混じりに微笑む。
そして小太郎の背中を優しく抱き締めた。



「――…小太郎、過去は以下略」
「オイ」



銀時に頭を叩かれた。
だって同じこと二日前に言ったばっかりだ。





110128.