「名前、仕事だ」
「はい」
「お前にしか出来ねぇ。コイツから情報を聞き出せ。」
「…やってみます」
「頼んだぜ。じゃーあ此処行ってくれぇ」
「すいません。松平さんの命で来た者ですけど」
「はっ、中へどうぞ」
真選組。
そう達筆な字で書かれた木板が掛かる門の前。
両側に立っていた隊士に身分証明書を見せれば中へと通された。
あら、身分証明書だけで通れるんだ。
偽造しちゃえば分からないんじゃないのかな。
「――あ!あなたがとっつぁん、じゃなくて松平片栗虎が送ってくれた方ですか?!」
「はい。多分そうです」
「いやあ出迎えが遅れてすみません!中で少しいざこざがありましてね」
「はあ…大丈夫ですか?」
「なに、何時ものことです。――トシ、総悟!」
その呼び掛けに、奥から二人男性が出てきた。
一人は黒焦げで、一人はバズーカを持っている。
「すまねえ近藤さん。この土方コノヤローが」
「んだとコラァ!…チッ、悪い近藤さ………」
すると黒髪の男の方が私を見て固まった。
瞳孔が開いた瞳にじぃっと見られて眉を寄せる。
……ん?あれ?
そういえば最近どこかで瞳孔がこんな風に異常に開いた人と関わったような…。
「トシ、総悟。こちらとっつぁんが送ってくれた幕府機関の方だ。例の奴の対応として来てくれた、…すいません、名前何て言うんですか?」
「名字名前です」
「名字さんだ!」
「よろしくお願いしまさァ。アンタがこれから会う奴、どれだけ拷問しても吐きやせんぜ。かなりのMでさァ」
「あらまあ」
「――…おい、」
「はい?」
「お前…俺のこと忘れてんのか?ああ?」
ギランと瞳孔がかっ開いた目で睨まれた。
「なんですかィ土方さん。新しいナンパですか?キモいな死ねよ土方コノヤロー」
「ちげーよ!」
んん…瞳孔、瞳孔…。
「―…あ、」
「思い出したか…。銃刀法違反さんよォ」
にやりと口元を上げたその人は、数日前に会った人。
「ありゃあどう見ても玩具じゃなかったがなあ」
「あ、あはは。まあ幕府機関に勤めてますとね、色々と物騒で。―さ、行きましょうか近藤さん」
「はい、行きましょう!」
「チッ、しょうがねえ」
「――高山龍衛門、25歳。過激攘夷派の一派の幹部だ」
「コイツらのアジトで数日後に同盟グループと会合が行われると情報がありましてねえ。場所を割らせたいんですがどうにも口を割りやがらねえんでさァ」
土方さんと沖田さんからの情報を耳に留めつつ、松平さんから貰った書類を眺める。
―…有力なアジトの候補は島田家と清家園か。
「彼は自分の一派への忠誠心は高いですか?」
「ああ。仲間の為なら自分はいくらでも犠牲になる、とよ」
「そうですか…」
なら、やり易い。
「じゃあ行きます」
「お願いします」
携帯のマナーモードを解除して10分後にアラームを設定する。
扉を開けて中に入る。
傷だらけの男が、私にじろりと視線をやった。
マジックミラーで隔たれた向こう側に近藤さん達が居るのが少しやりにくいけど…まあいい、集中しよう。
「…へえ、アンタは初めて見たなあ。色仕掛けでもしてくれんのかい?」
「まさか」
男の向かいの椅子に座る。
手足を拘束されながらも身を前に乗り出した男に、微笑んだ。
「アジトの場所を、教えてもらうよ」
100119.