――雨が降っていた。
周りには動かなくなった仲間が大勢地面に倒れていた。
俺はうつ向いたまま濡れていく地面を写していた。
「―…銀時、」
後ろから声がかかった。
死んだ仲間達、強く降り注ぐ雨、曇天の空の中でその声だけ色が違った。
名を呼ばれただけなのに、黒く溶けていた俺の心臓辺りが少し落ち着く。
―…でも、
「わりィ、独りにしてくれ」
なんでお前は何時も、何時も何時もこんな時に来るんだよ。
他の時はふわふわふわふわ、捕まえさせてくれねえのに
「嫌だよ」
なんで俺がこんな時だけ逃がしてくれねえ。
既に地面に水溜まりが出来てきた中を歩いてきて、名前は俺の隣に立った。
「銀時、」
「…先に母屋戻ってろ」
「イヤ」
「戻ってろって!」
思わず声を荒げてしまって、ハッと名前を見る。
名前は俺をじっと見上げて、そして微笑んだ。
「やっと此方向いた」
――何を思うよりも先に、体が動いた。
名前の腕を掴んで、抱き寄せた。
ぼろぼろと、言葉が勝手に出てくる。
「なあ…俺達なんで戦ってんだろうな」
「………」
「何も残りもしねえのに」
毎日毎日刀を振るって、何が残る。
仲間を日に日に失って、何が残る。
何も残らねえ。
「…今何かを失ったのなら、次に取り零さなければ良い。それだけだよ」
「…………辛ぇ」
「――銀時、大切な人に、大事な人に出会う機会はどれくらい有ると思う?」
首を傾げると、名前の手が背中に回った。
「大切な人が出来たら、また輪が広がって大切な人が増える。大切な人が増えたら、取り零しちゃうものが増える。―…けどね、銀時にとって大切な人は、銀時の大事なものを一緒に守ってくれる」
「…!」
「だから諦めちゃ駄目だよ。何時かまたきっと、素敵な人が銀時に会いに来る。大事な人がまた出来る」
「…っ」
「きっと次は出来るよ。取り零すことなんてない。――銀時の道を、歩かなきゃ」
そう言って笑ったお前は、確かに俺の腕の中に居た。
たった一週間前の話だ。
なのに、なのに、
「おい、名前は見つかったか!」
「っ見当たらん!町の向こうまで行ったが…!」
「チッ、ふざけんじゃねえ!死ぬなんて許すかよ…!」
――――終戦。
今までで一番死者が出た。
走り回る地面にも、倒れている仲間や天人。
でも何処まで探しても名前は居なかった。
「ふ、ざけんなよ名前!出てこいよ、なあ!何処行ったんだよ…!」
生きてるなら、絶対に帰ってくる。
「死んだとか言うなよ…!」
何時かまたきっと、素敵な人が銀時に会いに来る。大事な人がまた出来る。
お前だって大事だ。大切だ。
――お前が大事だ。大切だ。
何時かまた…なんて、お前以上の奴なんて来るのかよ。
「っ名前!!!!」
諦めちゃ駄目だよ
お前が居ない世界を、俺はこれから生きるのか。
100114.