「名字〜、俺もう晋助さんが何考えてんのか分かんねえよ〜」
「あはは、他の人の考えてることなんて分かんないよ」
「けどよ、けどよ〜」
「晋助さんきっと俺らのこと仲間だって思ってねえよ〜」
名前の部屋に入ろうと襖に手をかけた時、中から声が聞こえてきた。
―…くだらねえ。
踵を返そうとした次の瞬間、俺は思わず足を止める。
「大丈夫だよ。晋助は皆のこと、ちゃんと仲間だって思ってる。…ただ仲間の為に戦ってないだけなんじゃないかな」
柔らかく紡がれたその言葉。
動かねえ俺の足。
「仲間の為に…戦わない?」
「じゃあ晋助さんは何の為に戦って…」
「んん、何だろうね」
ハッ、誤魔化しやがって。
お前は分かってんだろ?
「でも皆が鬼兵隊に入ったのは晋助が好きだから。晋助の生き方が好きだから、憧れたからでしょう?」
「勿論だ!」
「痺れるっス晋助さんは!」
名前が少し笑うのが聞こえる。
「晋助が見据えるただひとつの道、真っ直ぐに見つめるひとつの道は、晋助の生き方。さっきも言った通り、晋助は皆のことを仲間だって思ってる。晋助は晋助の生き方を貫いてる。――何も不安になることなんて無いでしょう?」
俺は歩き出した。
鬼兵隊の奴等が雄叫びのようなものを上げるのに、軽く口元を上げながら。
なあ、名前。
お前は俺が奴等を仲間だと思ってると言うが…お前はどうなんだ?
――お前は仲間だと思ってんのか?
お前は何の為に戦ってんだ。
「おい、名前は見つかったか!」
「っ見当たらん!町の向こうまで行ったが…!」
「チッ、ふざけんじゃねえ!死ぬなんて許すかよ…!」
――――終戦。
今までで一番死者が出た。
走り回る地面にも、倒れている仲間や天人。
でも何処まで探しても名前は居なかった。
「馬鹿野郎…!」
片目なのが煩わしい。
お前が手当てした左目。
俺が片目になってから、俺の左に居るようになったお前。
「チッ、名前!!!!」
松陽先生が居なくなって、お前も消えるのか。
そんなくだらねえ世界、存在する価値があんのか。
――壊してやる、全て。
世界を、全てを。
100114.