「やった…やった…!ついに帰って来れた…!」
セイの涙声の言葉が聞こえてきて、体を遠心力に振り回されるような感覚に酔っていた私は静かに瞼を上げた。
「――まさか…セイか?!」
「リラ…!私だ!セイだ!」
目を開けたら其処は何も無い場所だった。
けどリラと呼ばれた男の人がいきなり現れた瞬間に、施設のような場所に変わった。
「貴女がセイを帰してくれたんだね!ありがとう!」
「ああ、…いいえ」
「ふふ…リラ、言葉が違…って、聞き取れるのですか?」
「…?」
「世界を越えぬ住民の中で真理を理解した者は、世界が変わっても言葉を聞き取れる。―…アイツも、そうじゃった」
「シリャ様!」
次々現れる人達を見ながら、ああ此処は違う世界なんだ、なんて実感する。
セイが帰って来たことはやっぱり特殊なことらしく、四方八方から現れる人々が私やセイを見ながら空中に何か書いてる。
書かれた文字の羅列はその場で消えたり、ふわりと空中を飛んでいった。
「…さて、セイ。のんびりしておる暇は無いぞ。早くこの方を元居た世界に返さねば、この方に影響が生じる」
「はい、シリャ様。…そういえばひとつ言い忘れてました。…貴女が世界を越えたことは、誰にも言ってはいけませんよ」
首を傾げると、リラが口を開いた。
「通説では、良くないことが起こるらしいです。世界によって違うらしいけど…世界を越えたことを話した瞬間、貴女じゃなくて話を聞いた者が災いを受ける、と」
シリャ…様が顔を悲痛に歪めたのが見えた。
セイが次いで言葉を紡ぐ。
「それから、世界を越えてないが私達異世界の存在を知っている者…私はあの世界に行った時彼等に見られたので、彼等は異世界のことを知っています。軍艦を爆発させたので大丈夫だとは思いますが…もし彼等の生き残りが居た場合、彼等が異世界のことを少しでも口にすれば、彼等に災いが起こります」
するとシリャ様が詰まったように言葉を紡ぎ始めた。
「お主が、お主が面白半分に言い触らすような者ではないことは分かっておる。真理を理解する者だ。しかし…わしを帰してくれたアイツは…心が壊れてしまいそうになり心配してくれてた大切な人に話し、…全て、無くした…!」
…この人が、セイより前に『世界を越えない世界』から帰って来た人か。
「…分かりました。絶対に、言いません」
そう言えばシリャ様はほっと息をついた。
そしてセイが私に向けて手を翳す。
「じゃあ…本当にありがとうございました。―…名前」
驚いて目を微かに見開いた先に、少し無邪気に笑うセイが見えて、私はまた世界を越えた。
「――変わった世界でした。刀という物を使ったり、惑星が沢山あったり、…あの世界だけで世界がいくつもあった」
「刀…惑星…?!もしや、セイ!お主が行った世界は天人というものが居たか!」
「はい、…!じゃあシリャ様が飛んだ世界は…」
「…きっと同じじゃ」
100112.