「おい、ヅラ」
「ヅラじゃない桂だ!…丁度良かった、銀時お前に聞きたいことが」
「なあ、おんしら」
「おい、テメェら」
「「「「…」」」」
母屋が襲撃を受けた次の日の昼過ぎ。
縁側で出くわした銀時、小太郎、辰馬、晋助の四人は、各々に何か聞こうとした様子に黙った。
「…どうやら皆、同じことを聞きたいようだな」
すると小太郎がため息をついて、三人を見回した。
「―…名前が何処に居るか、だろう」
朝飯の時、そしてついさっきの昼飯の時に姿が見えなかった。
部屋を訪ねてみてももぬけの殻だった。
「っちゅうことは誰も知らんってことじゃな…」
「…鬼兵隊の奴等に聞いたが誰も見てねえってよ」
「まあ名前は昨日、町に団子を買いに行くと言っていたからな…町に居るのかもしれん」
「アイツどんだけ団子食いたいんだよ。だから俺が小豆やるっつったのによォ」
「「「「…」」」」
再び黙る四人の空気を貫くように、居間の方から声が響いてきた。
「え!名前さん居ないんですか?!」
「あ、ああ。さっき晋助さんに聞かれてな。見当たらねえらしいぜ。そんなに驚いてどうした?」
「え、いや、その…名前さん、例の件のことで…自分から天人の所に行ったんじゃないですか?!」
「それはねえだろ。名字の奴、昨日の作戦会議にも普通に参加してたし」
「…っ、でも」
「何だよやけに食い下がるじゃねえか」
「――何か知ってんのか?」
「!ぎ、銀時さん!」
何時もの眠そうな目じゃなく真剣な、そして焦りが見える瞳の銀時に肩を掴まれ、新人の攘夷志士は体を揺らした。
「確かに…お前がそこまで食い下がるのも初めて見るな」
すると小太郎、辰馬、晋助も来て男を見る。
男は息をのみ、そしてぎゅうっと手を握り締めた。
「お、おれ、昨日の襲撃で怪我して、皆さんが作戦会議してる時は医務室に居たんです。そしたら階段を上がる足音が聞こえてきて…あの、名前さんは途中で作戦会議を抜けましたよね…?」
「昼寝するって自室に戻ったきに」
「…ああそうか、医務室は名前の部屋の隣だからな。戸の音が聞こえたのか?」
「っ…はい」
そこでまた男は一層更に手を握り締めた。
「でも…でも部屋に入る音はしませんでした。襖が開いて閉じる音だけ…名前さん、廊下に居たんです!聞いてたんですよ!皆さんが…その、名前さんの対応について話すのを…!」
ぼろり、と男の目から涙が零れ落ちた。
銀時ら四人だけでなく、居間に居る人間全員が息をのみ顔を青くさせた。
「――おい、凄ェ話だ!良いニュースだぜ!」
すると違う攘夷志士数人が息を切らし笑いながら居間に飛び込んできた。
「天人側の軍艦が爆発したんだってよ!三隻もだぜ!しかも俺らの母屋を襲撃するっつってた奴の!」
――次の瞬間、四人は居間を飛び出した。
母屋を飛び出し、その場所へ向けて。
100112.