あの後話し合いは解散し、その静かなざわめきに紛れて自室の襖を開き入り、そのまま寝ていた。
空は群青色と紅色がグラデーションになっていて、山の上に小さく光る丸が見える。
部屋を出ると、大広間からいくつかの話し声が聞こえてきた。
…もう夜ご飯か。
…寝起きだから食欲無いし、まだ良いか。
そうして木の床をひたひたと歩き玄関に向かう。
草履を履いて、ガラガラと音を立てて戸を引いた。
「名前、」
「…ああ、晋助。何かな」
「……何でもねえ」
「晋助」
「…なんだ」
「団子食べたいな」
「ククッ、太るぞ」
「ふふ、明日町行って買ってこようかな」
大広間に入っていった晋助の背中にそう言った。
「お、名前」
「ああ、辰馬」
「何処か行くんか?」
「いや…、暑いから開けとこうと思ってね」
「そーかそーか。名前は狙われとるから一人で外に出ちゃいかんきよ」
「…団子食べたいから明日町行こうと思ってたよ」
「町?んー…ならわしらと行くきに」
「そうだね」
井戸で傷でも洗っていたのか傷付いた肩を剥き出しにしながら庭の方からやって来た辰馬。
軽く返事をいなして笑う。
「そういえば晋助が今大広間行ったんだけど、愛しの辰馬居るかなって言ってたよ」
「まじでか、待っとれ高杉!なんての!」
「行ってらっしゃい」
にやりと悪戯心満載で口元を上げた辰馬が大広間に入っていくのを見届けた。
玄関を出て門へと向かう。
夜になると閉まるのは玄関だけじゃなくて門も同じ。
古い木の門は開ける時にギギギと軋んだ音が結構な大きさで響く。
草履に足を深くはめて、そして地を蹴った。
「「あ」」
屋根に着地するまでの間、視界の端に銀色が写ってそちらを見れば思った通り。
「銀時、こんなところで何して…」
「お前こそ」
「いや、銀時こそ」
「いや、名前こそ」
「いや、って…もう良いよ」
門の屋根の上に寝転がる銀時は確かによく見る光景だ。
何か定めるように真っ直ぐ見てくる銀時の視線に気付かないフリをして、私は町の方へと視線をやった。
「団子食べたいな」
「!お前もやっと甘味の良さが分かったか。小豆ならあるぜ」
「いらない」
「んだとォオ!」
「ふふ、明日町に行って買ってくるから良いんだよ」
「は?お前…」
「銀時、名前。飯が冷めるぞ。お前らで最後だ」
「ああ、小太郎。夜ご飯に団子あったかな」
「有るわけ無いだろう」
「だよね。じゃあやっぱり明日買いに行こう」
屋根を軽く蹴って門の外側に着地して、足に何も負担が無いのを実感する。
「もう門閉める?」
「ああ、そうだな」
「銀時そっちに降りてね」
ギギギ…!と壮大な音を立てながら門を閉めた。
「そういえば名前、高杉に何かしたのか?坂本を押さえ付けながら怒ってたぞ」
「……あ、」
100112.