早朝を狙って天人達が母屋に襲いに来た。
しかしそこは待ち構えていた攘夷側。
――天人は門に入る前にばっさばっさと斬られていた。
「ちくしょー来んのおせーんだよお前らはァあ!ブッ殺すぞ!」
「もう殺してるきに!」
「チッ!おいヅラァ!数少ねえじゃねえか!」
「おかしいな…彼奴らの話じゃ五十は居ると…」
ガッと背中を合わせた四人。
対峙する天人の一人が苛立たし気に怒鳴った。
「おい!アイツらはまだあんな女一人に足止め喰らってるのか!」
「はっはい!多…分……」
話している最中にピタリと天人の首にあてられた四本の刀。
それに青ざめ言葉を途切れさせた天人。
「ガラ空きだぜ!」
すると笑いながら他の天人達がかかってくる。
四人はそれらに目もくれずにたたっ斬った。
それにまた青ざめる天人。
「なぁおい、女って?」
「ヒっ…!」
「答えろ」
「…銀時、殺気を抑えろ。答えるものも答えられん」
「おい、てめえも知ってんだろ?答えろや」
隣の天人に刀を突きつけていた晋助がチャキリと刃で促す。
「ふ、はは!惜しいことをしたな、俺は」
「…どういう意味じゃ」
「いや…あの女を殺しとけば、お前らはさぞ悲しんだのかと思えば…くく、はっはっは!まぁもう手遅れだ!あの女は中々に強くてな。半分以上は置いてきて来ちまった!手遅れだよ!あのおん」
ザシュッ…――――
「死ね」
殺気を溢れ出した晋助。
違う天人がそのあまりの殺気に白目を向いて気絶してしまった。
四人は走り出す。
死ぬな、死ぬな、…!
間に合ってくれ……!!
走っていくにつれて漂ってくる血の匂い。
増えていく死体の数。
「「「「!」」」」
四人は足を止めた。
―――視界に広がるのは首。
首と離れた胴体もあれば、首が無い死体。
顔に刀が突き刺さったままの死体もある。
「…おいおい。まさかこれ…」
「…名前が…やった、のか…?」
「っ名前は何処じゃ」
「…!彼処だ」
晋助が指差す先には、木々に隠れる中心に座り込んでいる名前の姿。
名前を呼ぼうと口を開く前に、四人は見た。
「………」
無表情に、自分の首に刀をあてる名前を。
――ぶるりと体が震えた。
息を飲んで様子を見守っていれば、名前は静かに刀を下ろし、そして空を仰いだ。
四人の緊張が解ける。
「まったく彼奴は…心配かけすぎだ」
「でも…生きてて良かったぜよ…本当に」
安堵で座り込む三人。
晋助は腕を組んで、視線は名前に向けたまま
「……銀時、ヅラ」
「あ?」
「ヅラじゃない桂だ」
「…お前ら昔先生が言ったこと覚えてるか」
「…覚えてるっつーか、今の名前を見てよぉく思い出したぜ」
「…そうだな…」
「松陽先生っておんしらの先生じゃったか…。なんて言ってたんじゃ?」
「………」
空を仰ぐ名前と同じ空を見るように、晋助は空を見上げた。
「銀時、小太郎、晋助」
「ん?なんすか先生」
「君達は名前と仲が良いですね」
「はい、俺達はなまかです!」
「黙ってろヅラァ」
「高杉!だから俺はヅラじゃなくて桂だと…!」
「で、先生。名前がどうかしたんですか」
「無視かァ!」
「まぁまぁ二人とも。…そうですねえ、どうという訳でもないですが…」
「?大丈夫だよ先生。俺が名前は守るから。アイツよえーもん」
「ふふ、銀時、あの子は強いですよ」
「…俺負けたことねえよ?」
「そうですか。銀時も強いですね」
「先生、俺もです」
「……俺も」
「小太郎も、晋助も強いですね。……名前は、強いけど弱いのですよ。脆いとも、言えますかねえ」
「「「?」」」
「ふふ、何時か分かります。…だから銀時、小太郎、晋助」
「――…ありのままの名前を知って、そして、傍にいなさい」
「名前と一緒に居たいと、心から思うのなら…か」
(先生、やっぱり、俺達はまだ未熟だ。…こんな姿、初めて見たんだ)
101130.