雨が強く降る中、母屋の玄関の扉を開けたままにし、外を見ている銀時と小太郎。
すると雨で視界が悪い中に人影が見えてきた。
「「!」」
二人はガバッと立ち上がり目を凝らす。
雨に濡れて戦場から帰ってきたのは――
「…高杉…坂本…」
帰ってきたのは高杉と坂本。
そして高杉率いる鬼兵隊とその他の仲間達。
銀時と小太郎は拍子抜けしながらも、それでも仲間の無事な帰還にほっと息をつく。
けどまた直ぐに、不安が二人の心を包んだ。
「ん?銀時にヅラ、どうしたきに」
他の仲間達が母屋に入っていく中、晋助と辰馬が立ち止まり二人を見る。
小太郎が重い口を開いた。
「………名前が…」
瞬間、二人の顔色が変わった。
「おい、名前がどうした」
「酷い怪我して帰ってきたんか?!」
辰馬の問いに小太郎はゆっくりと首を振り、そして、
「――名前が、帰って来ない」
母屋に帰って来ない事。
それは大半は死を意味する。
ただ、名前と同じ場所に向かった他の仲間も帰って来ていないのがまだ幸いだった。
四人も、日が暮れて仲間と野宿をした事はある。
その可能性を信じて銀時と小太郎は待っていた。
全員全滅という過去に何度もあった惨事が浮かんでくる頭を無心にして。
顔を青くさせ息をのんだ晋助と辰馬。
すると晋助が再び雨の中に戻ろうとして、小太郎が素早くそれを止めた。
「離せヅラ」
「行くな、高杉」
「離せっつってんだ!!!」
「…違う母屋が襲撃された」
「………んだと…?」
「幸いそこに居た奴等は全員無事に逃げてきたが、他の母屋も襲われる可能性が高い。…俺達が離れる訳にはいかぬ」
「…チッ!」
小太郎の腕を無理矢理振り払い、そしてグッと歯を噛み締める晋助。
「わしらは…ただ待ってるだけしか…出来んのか」
「…名前が帰って来た時に母屋が無きゃしょーがねえだろ」
「銀時…そう、じゃな」
そして四人は、雨の先を見つめた。
(君が見えない)
101129.