微笑む嘘吐き | ナノ
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「そうして私はその後、先生に言われたように、寺子屋に火をつけて、燃やした」


下を向いたまま、話す。


「寺子屋にあった刀で床を削り、壁を傷つけて…確かあのとき季節は秋だか冬だか…とにかく乾燥していたから、火は瞬く間に大きくなった」
「…ちょうどその辺りだったか、俺達が騒ぎを聞きつけ、寺子屋に着いたのは」


小太郎の言葉に頷き、目を閉じた。


「裏口から出ていくときに、駆けつけに来た銀時や小太郎、晋助を見たよ。けれど、けれどやっぱり本当のことは、言えなかった」


震える手を抑えるために、膝の服を握りしめる。


「臆病で、ごめん。別に寺子屋を燃やしたことで何か言われるのは、それは覚悟の上だった。けれど、松陽先生のことを全て話すとまた、闇が現れると思ったから」
「……」
「みんなまで失うことは、絶対に、嫌だったんだ」
「…ったくまあ色々と隠し事しやがってよ、本当。…真実を知るお前が、一番ツラかったハズだっつうのに」
「……」
「テメェが怪我人じゃなかったら、抱きしめて窒息させてやってたところだ」


銀時の言葉に、目を丸くして瞬きを数回。

すると右に座る晋助が私の肩を掴み、引き寄せてきた。


「おい高杉、席変われ」
「変わるかよ、白髪バカ」
「ンだとテメェ!」
「金時も高杉も待ち!わしは攘夷戦争からの付き合いじゃき、名前が、灰色の髪の天人に欲しがられた時の話が、聞きたいぜよ」
「つうかだから、俺は銀時だっつってんだろ!」


昔と変わらず始まる言葉の攻防の中、私は眉を寄せながら考える。


セイの事件の時のこと。
あのとき私は、本当は世界を越え、セイを元の世界まで帰す手伝いをしていたというのに、団子屋に行っていたと嘘を吐いた。


「ええと、とりあえずまあ…団子屋に行っていたというのは…嘘、だね」


すると四人の目が厳しくなった。

イライラと私を見るその目に、私はひきつったような笑みを浮かべる。


け、けれど世界を超えた、なんて言ったらきっと、あの闇が現れてしまう。
それなら、いったいどう言えば良いんだ?
ええと、私はあの時、この世界にはいなかった、…ということだから…


「簡単に言うと…私はそのとき、死んで、いた。…という感じかな、…ア、ハハ」


――その時の四人の顔と言ったらもう…しばらくは、頭から離れそうになかった。
そして思いだそうとすれば簡単に、写真を見るように思い出せそうだ。


「アハハじゃねえだろ?!なにとんでもねえこと暴露してんだテメェは!」
「死んでいただと!しかし今お前はここに居て…ハッ!まさか幽霊ではあるまいな!」
「ごめん、少し言い方が、」
「本当に名前は、色々自分でやりすぎじゃ!」
「ほかに隠してることはねえんだろうな…!」
「あ、ああうん、そうだね、無いと思う」


私は目を細めて、微笑んだ。


「吐いた嘘の、真実達だよ」





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