微笑む嘘吐き | ナノ
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



目を、開ける。

様々な色が、視界にあった。

一度瞬きをして、また目を開ける。
視界が、ボヤけている。


「――名前…!」


数度瞬きをして…そうして私はようやく、しっかりとみんなを捉えた。


「傍に、いてくれたんだね」


息の配分が多い自分の声。
そして小さい声に、気づけば口元には酸素マスクが付けられていた。


「ありがとう、けれどね、分かっていたよ」


泣きそうに顔を歪める、彼らが私は大切だ。
私は自然と、微笑んでいた。


「声が、聞こえたから」


――名前!名前さん!と神楽と新八が私の首元に抱きついて、本当に、幼い子供のように大声で泣く。

そんな二人の頭を撫でようと思って、けれど右手が、痛いくらいに握られる。

そしてそんな右手の甲を、何かあたたかいものが流れた。

私はまだあまり力の入らない腕を上げて、右手を上げる。
すると力を抜き右手を離してくれた晋助の、頬に…私は手をあてた。


「晋助…泣いているの…?」
「…目ぇ覚めていきなり嘘、吐いてんじゃねえよ」
「ふふ…嘘じゃ、ないのに」


うつむいたまま顔を上げない晋助は、頬にあてた私の手を、すがるようにまた、握りしめた。

私は少し顔の向きをズラして、私の左手に顔をあてている銀時を見た。
左手の指の間を、涙が縫っている。


「銀時も…泣いているね…」
「…馬鹿野郎、お前はホンットにバ、カ、」


銀時の言葉の終わりが、震える。
銀時は唇を噛み締めると、私の手を握りしめて


「馬鹿野郎、普通の詫びじゃ済まさねえからな」


そう早口で言った。


「名前、良かった、本当に良かったぜよ…!」
「辰馬…」
「本当にお前は昔から、心配ばかりかけおって…!」
「小太郎も」


ふふ、と笑うと、ドアが勢いよく開く音がして。


「退けテロリストども!場所を譲れってんだ!」


場所を向くよりも先に、小太郎やら辰馬やらを突き飛ばした松平さんが私の元へ来た。
松平さんは私と目が合うと、顔を歪め、じわりと涙を浮かべる。


「名前、テメェ、色々隠し事しやがって、馬鹿野郎」
「すいません、松平さん…」
「馬鹿野郎!謝る前にまず生きてることを喜びやがれ!…栗子に顔向け出来なくなるところだったぜ…」


すると私に背を向けて、腕で目元を擦る松平さんの肩に、近藤さんが手を置く。
そしてその隣で、土方さんも沖田さんも、いつものように笑っている。


「ほらね、だから言っただろう。年寄りの私でさえ、生き延びたんだから、ってね」
「お登勢さん…」
「目が覚めてよかった、名前。これで晴太と共に、見舞いにこれる」
「月詠も」


病室をうめ尽くす泣き声と、笑顔に。

私は、目を細めて微笑んだ。











――夜になり、私は病院の屋上に来ていた。
少し冷たい風が私の髪を、そして銀時、小太郎、辰馬、晋助の髪を揺らす。


「今日は満月か、また大きな月だな」
「それより名前、寒くないんか?冷えるぜよ」
「ありがとう、大丈夫だよ」


小太郎と辰馬と、晋助のであろう船が三隻、少し離れた空に浮かんでいる。
――松平さんや真選組は今は、小太郎や晋助を捕まえる気はないようで。

とても、感謝した。


「さて、それじゃあ」


前のベンチには銀時と小太郎が、そして私の両隣には辰馬と晋助が、座っている。


「何から話そうか」





120121