「――これを言ったら、多分旦那は怒るだろうけどよ…」
風の国のとある場所、川の側の洞窟の中では、ナルト、サクラ、カカシ、砂の相談役のチヨ、そして暁のデイダラ、サソリが対峙していた。
デイダラの座る下は、地面ではなく、倒れている我愛羅。
――瞳を紅くさせ、頬の三本線を濃くさせながら睨んでくるナルトを見て、デイダラがにっと口角を上げる。
「あの人柱力は、オイラがやる」
「…ノルマは一人一匹だろうが…図に乗るなよデイダラ」
「――芸術家ってのは、より強い刺激を求めていねぇと、感情がにぶっちまうもんなんすよ、旦那」
交わされていく、芸術を題とした勝手な会話。
ナルトの怒りが限界をこえ、その怒りのままに、風魔手裏剣が投げられた。
「ふっざけやがって…!!」
――サソリに向かって放たれたそれは、けれどヒルコの尾によって、いとも簡単に弾かれる。
金属音を響かせて飛んでいくその手裏剣は――暁の衣から伸ばされた手によって、静かに、受けとめられた。
「起きちまったか、うん」
「お前は休んでて良いと言った筈だろ…」
「旦那の声がうるさくて起きちまったんじゃねぇのか?」
「無駄にうるせぇのは、お前のほうだぜ…」
「――デイダラさんよりもサソリさんよりも前に、とても大きな目覚ましがありましたから」
「――テメェら…!!ぶっつぶす!!」
――洞窟の奥の奥、暗がりで寝ていた私は、ナルトの怒鳴り声によって目を覚ました。
そうして歩いてきた時に、風魔手裏剣をちょうど、受けとめたんだ。
――ナルト達の食い入るような視線を感じながらも、見返すことはしないで、風魔手裏剣をソッと地面に置いた。
「名前……お前、どうしちまったんっだってばよ…?!」
――ナルト…結構、声が低くなったなぁ……当たり前か、男だからね…。
…けれどナルト…、私はナルト達のことを、見ることなんて出来ないよ。
「我愛羅が倒れてんのが…見えねぇのか…?!」
木の葉の里から出て、二年。
短いようで、長い、二年だ。
「オイ…!答えろってばよぉ!名前…!」
そりゃあ、この眼で視てはいたけれど……やっぱり生で見るのとはわけが違う。
きっと、かっこよくなった。
きっと、可愛くなった。
二年前ですら素敵だったみんなを久しぶりに見るのには、少し時間がかかるんだ。
こころの、準備がね。
「こっち見ろってばよ…!」
――よし…もう、大丈夫だ……きっと、――と、私はゆっくりとナルトを見据えた。
「――倒れているんじゃないよ、ナルト」
「、…、?」
「我愛羅は――もう死んだ」
「――――……!」
111005