「――終わったな」
ペインさんの声が洞窟のなかに静かに響き、尾獣を完全に抜かれた我愛羅が、地面に落ちる。
そのリアルな音に眉を寄せ、地面に倒れたまま動かない我愛羅を見て――ほぅ、と息を吐いて目を閉じた。
「毎度のことながら、しんどいですねぇ」
「肩、凝っちまったぜぇ」
すると私の後ろに、誰かが外道魔像の指のうえから降りて着地した。
振り返ると、それはイタチさんで…。
「身体は、大丈夫か」
「はい、問題ありません。何よりまだ、時空眼を解いてはいませんから」
するとイタチさんは静かに膝を折り、私の背中に優しく手をあてる。
「寝ていても別段、時空眼が勝手に解けてしまうというわけでは、ないんだろう」
「はい、それは大丈夫です」
声の大きさを落として言ったイタチさんに、にっこりと笑って頷く。
イタチさんは私を真っ直ぐに見ながら、
「ならば、このあとは寝ておけ」
「…けれど、この後は――」
すると、洞窟の入り口、結界が張られている岩が、低く大きな音とともに揺れ始めた。
それに気を取られている暁のほかの人達の様子を伺いながら、私は声をひそめて、
「この後は、木の葉の…、――ナルト達との、交戦が…」
「だからこそ、だ。一旦身体を休めないと、負担を蓄積しすぎてから一気に身体に戻すのは危険だ」
再び岩が揺れ、その振動が微かに洞窟に伝わる。
「サソリ、デイダラ、名前」
するとペインさんに呼ばれて、見あげる。
「外の奴らは、お前達で始末しておけ。――ゼツ」
「ナンダ…」
「そこには、人柱力のやつも居るんだな?」
「そうだよ、九尾の人柱力、うずまきナルトさ」
ゼツさんの言葉に、ペインさんが頷いた。
「人柱力は生け捕りにしろ」
「はい、ペインさん」
「わかってるよ、うん」
「フッフッフ…わりぃな、イタチ……お前のノルマは、俺が貰うぜ…」
するとイタチさんは立ち上がり、
「それより、木の葉の連中がここに入ってくるまで、まだ時間があるだろう。名前を一旦休ませておけ」
「つぅか、名前。その眼、解かないのか?うん」
「あ、いや…あの、このあとどうせ、戦うことになりますから…」
「お前が参戦するまでもねぇよ…俺達だけで十分だ…」
サソリさんとデイダラさんを見ていたイタチさんが私を見て、優しく頭に手を乗せた。
「そういうわけだ、少しの間か、それ以上…寝ておけ」
「…ありがとうございます」
後ろの壁に寄りかかり、私はゆっくりと、目を閉じた。
111005