――…真っ白な、世界…。
明るすぎずもなく、眩しくもない世界で…視界に、誰かの手がうつった。
「なんだ……俺の手か…」
立っては、いない。
そして座っても、いない。
横になっているわけでも、ないと思う…。
浮いているのか、浮いていないのか…。
いま、感覚というものが無いから、よく、分からない…。
「あれは……俺…?」
すると、そんな状態の中、向こうに「俺」が見えた。
まっすぐに「俺」を見てきている「俺」を、見る…。
――あの目。
あの鼻、あの口…。
あれは、我愛羅…。
誰かに必要とされたがっていた、おれ……。
――俺は、その中にいた。
「…いや、」
そもそも…俺とはなんだ…?
何者、なんだ…?
「――ごめんね…」
…すると、どこか心の奥の方から、声が聞こえた。
立っているのかすら、分かっていなかった、感覚が無い状態だったはずなのに…――
「ごめんね、我愛羅…」
震えている、その声が聞こえただけで…俺の心臓は、確かに動いた。
動いたと……その感覚が確かに今、俺の中にある。
「…だれ、なんだ……?」
声が、震えている…。
靄がかかっていて、誰なのかは分からない…。
けれど、何故だか俺は、たまらない気持ちになった…。
何が出来るのか分からないのに、何かがしたい…。
震える声を、なぐさめたい。
心臓が、強く動く。
「けれど…――大丈夫」
分からない…見えないはずなのに、柔らかい…優しい、笑顔を、俺は感じた…。
急かすように…強く、動いていた心臓が緩み…こころが解れていくような感覚…。
「絶対に――、大丈夫…」
――薄れていく意識のなかで、ようやく見えた、人…。
それが、――名前だったのは……ただの俺の、願望…なのだろうか……――。
111005