「一尾捕獲完了だな、うん」
力尽きて、絶対防御と謳われる我愛羅の砂がくずれる。
そしてそれに伴い、空から落ちていく我愛羅を、デイダラさんの粘土で出来た、鳥の尻尾がつかまえた。
私も術を終えて、砂の門へと引き返しに入ったその鳥のうえに乗せてもらう。
デイダラさんは私を振り返り
「わりぃな、名前。お前の時空眼に頼らせてもらう前に捕獲は完了だぜ、うん」
「はい、けれど元々ここまで来た理由の内、それは二番目でしたから、いいんです」
「…?じゃあ、一番目は」
首を傾げるデイダラさんに、にっこりと笑う。
「サソリさんが待ってます」
デイダラさんの顔がひきつり、固まった。
「いっ…てぇな、――大体サソリの旦那はせっかちなんだよ、うん」
「デイダラ…お前、もう一発殴られたいらしいな…」
「長く続く永久の美、とか言ってる割には短気だよな」
砂隠れから離れて、尾獣の封印をする場所へと向かい、砂漠を歩いている最中。
サソリさんの、ヒルコの尾が再びデイダラさんに向かおうとして――
「待て!見つけたぜ…!」
その尾は止まり、サソリさんを含め私達は、声の聞こえた後ろを向いた。
「名前…!」
そこに居たのはカンクロウさんで、――久しぶりに会うカンクロウさんは、許せない、という息の震えを背景にしながら、私の名を呼んだ。
私はそんなカンクロウさんをじっと見つめる。
するとサソリさんが私達を見上げた。
「お前らは先に行け…」
「――分かりました」
「乗れよ名前、うん」
デイダラさんにお礼を言い、私は白い鳥のうえに乗る。
「待てよ、おい!――名前!お前…!」
「さっきから何なんだよお前、名前の知り合いか?うん」
デイダラさんが愉しそうに笑いながらカンクロウさんを振り返る。
けれどカンクロウさんは変わらず眉を寄せながら私を見ていて、そうして、鳥の尻尾に拘束されたままの我愛羅に目をやった。
「名前…!お前、我愛羅のその姿を見て、何も思わねぇわけじゃねぇだろうな…!」
「、」
「ふざけんな!!我愛羅がどれだけ努力して、なんの為に風影になったか…!」
「…?私には、関係の無いことです」
我愛羅が風影を目指したこと、風影になったことに、私になんの関係が……?
私は、観客なのに。
するとカンクロウさんはグッと眉を寄せた。
「我愛羅は、里につながって生きるために風影になった!けどなぁ、暁への対策を積極的に取ろうとしない砂を変えるためにも、なったんだ!」
「……」
「それもこれもすべて――名前!お前を捜すためじゃんよぉ!!」
――はっ、と思わず笑った私に、カンクロウさんが目を見開く。
「戯言はよしてくださいよ、カンクロウさん」
「!戯言、だと…!」
「そんな嘘をついても、我愛羅は返せません」
「嘘じゃねぇ!!」
吠えるカンクロウさんは、必死だ。
まあ、当たり前だけれど。
そうすれば私の心が緩んで、我愛羅を返すかもしれないと思っているだろうから。
けれど――その嘘は私にはまったくと言って効かない。
「おい、お前…ベラベラベラベラとうるせぇな……俺が相手するってのに、待たせやがって…」
ヒルコの尾が揺れる。
「じゃあ旦那、オイラたちは先に行くぜ」
「後で会いましょう、サソリさん」
「ああ…」
待て!と自らの傀儡を出すカンクロウさんに、眉を下げて笑った。
「大丈夫ですよ、カンクロウさん…――カンクロウさんはサソリさんに、勝てませんから」
カンクロウさんが訝しげに眉を寄せた。
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