「――潜入成功」
――黒地に赤雲の模様が描かれた外套のようなものを靡かせながら、白の粘土で出来た鳥のうえに立っている、卵色の髪をした男…。
S級犯罪者で構成された謎の小組織、暁のメンバーの一人だろう…。
「名字名前も、里を抜けた」
「犯罪者になれば――S級になる日も遠くないだろう」
「――――……絶対に、逃がしはしない」
やっと、見つけた。
やっと、近づいた。
名前が誰にもなにも言わずに里を抜けた、あの日から…ずっと、焦がれていた。
名前が里を抜け、S級の犯罪者で構成された組織に入ったなんて……わけが分からなかった。
けれど、捜したかった。
「こんなことは、言いたくねぇが……里にとってお前は、恐るべき兵器でしかない。今更俺たちから離れて、正規部隊に入るなんてキツイだけじゃん」
「お前をよく思っていない上役ばかりだし、里の大半も、お前に対して恐怖心を抱いている」
…だが、人柱力として、里の中ですら自由に、正規として扱われることのない俺が、砂隠れから出て、名前を捜すことなど到底不可能…。
少し遅れて砂隠れの里にも暁の情報が入り、その目的が尾獣だと上役が知ったときには、その可能性はゼロに等しかった…。
「…が、待っているだけでは、もっと大きな苦しみにまた襲われる……努力し、自ら切り開くしかないんだ、一人きりの孤独な道に逃げずに……うずまきナルトを見て、そう思った…」
「アイツは俺と同じ苦しみを知っていた、そして、生きる道を変えることが出来ることを教えてくれた…」
けれど、アイツが…ナルトが、そう教えてくれた…。
きっとアイツは今でもずっと、名前と、そしてうちはサスケのことを想い、情報を探し、必死に手を伸ばしつづけているはず…。
――チャクラが少なくなってきたせいで、息が荒くなる、身体が重くなる。
ぎり…と手を握りしめた。
他人とのつながりは、苦しみや憎しみでしかなく、すべての者を傷つけていた、あの時の俺じゃあない…。
里の中で何も出来ずにいた、あの時でもない…。
木の葉よりも積極的に暁のことに乗り出さない砂を変え、少しでも多くの情報を得るために努力した。
そしていま、その暁がここに居る…。
俺は、絶対に…――
すると里の門のほうから、何かが飛んできた。
近づいてくるに従い見えてくるそれはどうやら人間で、そして同じ、暁の格好をしている。
「増援か…、……?!」
――そいつは、琥珀色の髪を靡かせていた。
ド、クン…!
心臓が、重く強く、動く。
俺の少し前方の空間、空が何やら振動し始めたかと思えば、透明な膜が出来上がり――ソイツはそこに着地した。
「――――……名前…」
その時に思ったことは、名前の目の色が違う、ということだった。
髪と同じような色をしていた筈なのに、今、名前の瞳は白緑色になっていた。
そして、もうひとつ…。
俺を見つめる名前の瞳が、揺れていた。
「、ぐァッ…?!」
先ほどから交戦していた粘土を使う男に、隙を感づかれたのか、俺の砂を通り越して爆発が身体に伝わって。
薄れていく意識の中、けれど俺は最後まで、名前を見続けようとしていた。
…俺は、絶対に…――
「名前…――」
意識は――そこで途絶えた。
111004