舞台上の観客 | ナノ
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BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -
「あの、カカシ先生」
「ん?何だ?名前」
「先生の読んでる…イチャイチャパラダイス…?って、面白いんですか?」
「……まーね」


へえー、と。
声を漏らすと、カカシ先生は何故か焦って私を見た。


「だ、駄目だからね?子供にはまだ早いよ」
「…?でも、面白いなら」
「だーめ。…帰ったら里中の本屋を見張らなきゃな…」


――Cランク任務で、波の国へと向かい歩いている道中。
先頭を歩くナルト、次いでサクラ、サスケ、そして任務の依頼人のタズナさん。
その少し後ろを行くカカシ先生と私。


読んでみたいな、イチャイチャパラダイス…。
略してイチャパラ。
…って、本屋の看板に書いてあった気がする。


ちらりとカカシ先生を見ると、先生は地面の水溜まりを少し見ていた。

私は少し考えて、そして太陽が真上にある空を見上げた。


「カカシ先――」


ザッ…!と。
黒い忍服を着た二人の忍が音も無く現れた。

二人の鎖に引きちぎられて、目の前でカカシ先生が肉塊になる。


「きゃああーっ!!」
「カカシ先生ーっ!!」


サクラとナルトの叫び声が辺りに響く。
サスケが動き出す。

私もその場を蹴って、タズナさんの所に行きクナイを構えた。


カカシ先生はきっと…いや、絶対に死んでいない…!
この晴天の中で水溜まりがあるのはおかしい。
きっとこの二人の忍者はそれに隠れていた。
カカシ先生は…気づいていたから、大丈夫だ!


瞬時にそう思考する。
と、向かいに居るナルトが一人の忍者に切りかかられているのが見えた。


「サクラ!タズナさんをお願い!」


そう言葉にして走り出す。
敵の忍者が二度目の攻撃を仕掛けようと腕を振り上げた隙にナルトの前に飛び込む。
重いクナイを受け止めた。


「!名前…!」


ナルトの声を聞きながら足からクナイをもう一つ取る。


――敵の攻撃を受け止めて、その時に出来た隙を狙う…!


目を細めて歯を食い縛った、次の瞬間――


「ぐあっ…?!」


敵の忍者の首に手が回った。
その手に首を引き寄せられて、敵の忍者は鈍い声を上げながら私達から離れる。


「――カカシ先生!!」
「生きてたのね!!」


その腕の正体はカカシ先生。
もう一人の敵の忍者、恐らくタズナさん達を狙いに行っていた――って!

私は思わず目を見開いた。


「…っ」


サ、ササ、サササスケが…!


「げほぉっ!…〜っ」


こ、これは、…刺激が強すぎる…!
だ、駄目だ!
一回深呼吸!
っていうか目を離そう!


にやける口元を覆って俯く。
抑えきれない息の乱れが、肩の震えとして現れた。


「ナルト…すぐに助けてやらなくて悪かったな。怪我させちまった。…お前がここまで動けないとは思ってなかったからな」


サスケはきっと、サクラを護ったんだ……!
クナイを構えたままカカシ先生の名前を呼ぶサクラ。
その前に居るサスケ。
これはもう、〜っああ!生きててよかった!


「とりあえずサスケ、それにサクラも、名前も、…っ?!名前?!」


カカシ先生に驚いた声で呼ばれて、口元を覆って肩を震わせたまま見上げた。


「どうした!やられた様子は無かったが、まさかコイツらに…!」


カカシ先生はそうしてぐっ…!と敵の忍者二人の首を腕で更に締める。

私は言葉を発することが出来ないから、首を横に振った。


「……コイツはアカデミーの頃からこうなってた。…お前、体弱いのか?」


するといつの間にかサスケが隣に来ていて、私を覗き込んだ。

サスケの顔を見た瞬間さっきの光景がフラッシュバックして、私はまた咳き込む。
けれど、違う、と伝える為に首を横に振った。


「…違くねえだろ」
「名前!はい、私水持ってるから、飲んだ方がいいわ!」


いや…水より、どっちかって言うと二人がちょっとだけ離れてて欲し…けどやっぱり見ていたいかも。






110409.