「………………」
「……カカシ…」
「………………」
綱手様の話が終わって、少しして部屋を出てきた。
火影邸の屋根の上で座っていると、ガイやアスマ、紅が後ろに居た。
「…俺さァ、まだ名前が暁に自分から行ったなんて思えないんだよね」
「……俺もだ…」
「暁が名前に幻術かけたりして、無理矢理連れてったんじゃないかな」
「…カカシ、俺も認めたくねェし、まだ訳が分からねェが…第一発見の忍の証言によると、名前が自分の意思で暁に行ったと見て、間違いない」
――じゃあ、と俺は言う。
「どうしても分からない。名前は暁に勧誘されても行かないよ、絶対に」
「…それは、私も思うわ…」
他人のことなんて、自分以外だから断言出来ない筈なのに、何故か名前は出来る。
――S級犯罪者、人を無闇に残虐に殺して、下手したら里や小さな村さえ潰す。
そんなこと、名前はしない。
名前は木の葉や、大切な人のことをすごく考えて、想ってる、優しい子。
――でも、名前は里を出ていっちゃった。
誰にも何も言わないで。
誰に悟られることなく、最初っから名前なんて居なかったかのように、消えた。
「名字名前です」
「イチャイチャパラダイス…?って、面白いんですか?」
「久しぶりにカカシ先生に会えて、嬉しいです」
――でも、そんなの無理。
だって名前と俺は確かに出逢った。
名前は俺の部下で、教え子になり、俺は名前の先生になった。
ちゃんと確かに、全部、残ってる。
「…まったく、ホーント俺って駄目な奴」
「…カカシ…」
「……ん?おい、あれ…木の葉丸じゃねェか?」
「本当ね、すごい急いで…、…あの方向は名前の家よ」
――俺達は視線を交わし、屋根を蹴った。
「今はまだ全然頼りないけど…強くなる!強くなって、絶対名前を連れて帰るから!」
名前の家の近くの屋根の上から、ナルトやサクラ、木の葉丸の様子を見下ろす。
隣にいるガイが少し笑った。
「ふっ…、子供は強いな」
「ああ、…木の葉丸ももう泣き止んでる」
「ふふ、何かに燃えているみたいね」
俺は、どこか強くなったような笑顔のナルトとサクラを見て、ぽつり、呟く。
「子供って、成長早いね」
……名前も、そうして変わっちゃったのかな。
「私は、先生が、カカシ先生で、良かったです」
「アスマ先生も、紅先生も、他の人達も素敵です。でも私は、カカシ先生の教え子になれて、部下になれて、嬉しかったって、そう思ってます」
――…いや…、
「…カカシ、俺はお前は駄目な奴なんかじゃないと思うぞ。何たって俺の永遠のライバルなんだからな!」
「ああ、さっきの?あれ、前言撤回ね」
「何ィッ?!い、いやまあ良いことだが…」
「あの時の名前の言葉が、嘘だったとは思わねェ!!」
…まだよく分からないよ。
なんで名前が暁に行っちゃったのか。
でも、他人のことなんて、自分以外だから断言出来ない筈なのに――、
「――先生が、カカシ先生で良かった」
あの時の言葉は嘘じゃない、って、何でか言えるんだよね。
110623.