舞台上の観客 | ナノ
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「#お仕置き」のBL小説を読む
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サスケ君が里を抜けて、連れ戻せなかったって分かった時、すごく悲しかった。
でも、ナルトは約束してくれた。



「サスケは絶対ェ、俺が連れ戻す!一生の約束だってばよ!」



嬉しかった。
すごく、嬉しかった。

――綱手様に呼ばれて部屋に行くと、怪我がまだ治ってないナルト達や同期のみんな、それに砂の忍、担当上忍の先生達まで部屋に居た。
けど、名前が居なかった。

その時の私は、名前が居ないことを、サスケ君が里抜けしたことで悲しんでるからだろうって思ってた。
だって名前は、すごく優しくて、いつも私達のことを考えてくれているから。
…でも――、


「名字名前も、里を抜けた」


――その言葉を聞いた時は、意味が分からなかった。
綱手様が何を言ってるのか、理解なんて出来なかった。

綱手様が話す言葉も、ナルトや他のみんなが言う言葉も、耳の横を通り過ぎる。
頭になんか、入ってこない。


「暁、――S級犯罪者で構成された謎の小組織だ」


何も、何も分からない。
だって、あんなに優しい名前が、犯罪者だなんて、分からない、分からない…。



「サクラは素敵だよ、とっても強い、女の子だ」
「…サクラが、ナルトとサスケを守ったんだね」
「ありがとう、サクラ…よく頑張ったね」



分からない…分からない…!
何で、何で名前が里を抜けるの…?!
何で名前が、名前が…!



「サクラ…ごめんね、サクラが身体を張って二人を止めようとすることは分かってたのに、遅れてしまって…」



――…私は、弱い…。
本当は、どこか心の中で、名前に泣きつきたいって、そう思ってた。

中忍試験の死の森の時も、病院の屋上の時も、名前は一番辛い筈なのに、いつも私を優しく抱きしめてくれた…!
辛い筈なのに、悲しい筈なのに、いつもいつも…!




「――…、…ばいばい」




「ひっ…く、…っ…」


――何で私は…、気づかなかったんだろう…!
あの時の名前の笑顔が、いつもと違うことに…!
サスケ君のことで頭がいっぱいで…――いつも私を助けてくれてた人のことを、ちゃんと見れてなかった…!

ナルト…!アンタはいつもちゃんと、私のこと、分かってくれてたのに……!

私は、いつもいつも……!




「あの時名前が里抜けするって、暁に入るって、考えてたとしても…!」


するとナルトが声を上げた。
涙を流したまま前に居るナルトを見上げる。



「あの時の名前の言葉が、嘘だったとは思わねェ!!」



――――……!
――涙が止まった。
つい数日前の、病院の屋上の時のことが頭に浮かぶ。



「絶対に、最後は元に戻るから…!絶対に、仲直りさせるよ!」



――息が荒くなって、不規則になって、また涙が止まらなくなる。
嗚咽を漏らしながら、いつものように笑う名前を思い出していた。


名前、名前……!
嘘じゃ、ないの…?
私、私、分からない…!
けど、――信じたい…!
ねえ、なら名前、何で、何で里を出てっちゃったの…?











――ナルトに言われて、名前の家に一緒に来た。
小さなアパートの一番端の部屋のドアを、ナルトが開く。


「………………」


分かっていたけど、やっぱり、辛かった。
前に来た時は、淡くて柔らかい色合いで統一されてて、名前によく似合ってるなんて、思った記憶がある。

でも今は、本当に何も無い。
生活感の何も無い部屋に、カーテンだけあるのが、更に寂しさを出してる。


――本当に、名前はもう、居ないんだ…。


するとナルトが手を握りしめ震えているのが分かった。


「ナルト…」
「サクラちゃん…!俺、あの中忍試験の時以来かもしれねェ…!名前に、ムカついてるってばよ…!」


ナルトを見ると、歯を食いしばりながら、何も無い名前の部屋を見つめている。


「里を抜けるにしても、全部消してく必要はねェッてばよ!なんか、なんか…!もうここには絶対ェ戻ってこねェって言ってる気がして…!」


その言葉に、私も眉を下げ唇を噛みしめた。
ナルトの言ってること、分からなくもないから。


「…五人だったのに…一気に三人になっちゃったわね…」
「サクラちゃん……」


するとナルトがギュウッと手を握りしめた。


「サクラちゃん、俺、約束したってばよ…!サスケを絶対ェ木の葉に連れて帰る、って…。だから俺、絶対ェ、名前も…!」
「――ナルト兄ちゃん!」


すると悲痛な叫び声がして、私とナルトはそっちを見る。
そこには息を切らしている木の葉丸が居た。


「ナルト兄ちゃん!嘘だろ、嘘だろこれ!」
「木の葉丸……」
「名前姉ちゃんが里を抜けたなんて、嘘だろ?!これ!」


走ってきた木の葉丸は、ナルトの服を掴んで揺らして、そして何も無い名前の部屋に気がついた。
目を見開いて、たどたどしく玄関に足を入れる。


「っ…名前…姉ちゃ…」


ふるふると木の葉丸の肩が揺れたかと思えば、木の葉丸は床に膝をついて泣き出した。


「うわぁあああん!名前姉ちゃあああん!」


私はそんな木の葉丸を見て、一時だけ目を強く閉じ、そしてしっかりと開いた。


「――木の葉丸」
「うわぁあああん!!」
「私が、――私が必ず!名前を連れて帰るわ…!」


言うと、ナルトが少し驚いたように私を見て、木の葉丸は目を丸くして私を見上げた。

にこっ、笑う。


「今はまだ全然頼りないけど…強くなる!強くなって、絶対名前を連れて帰るから!」



「身体的な強さなんてサクラならいくらでも着いてくるよ。サクラは心が強い、女の子だから」



――名前の言葉、嘘だなんて、思わない…!





110623.