舞台上の観客 | ナノ
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――うちはサスケが里抜けしたという情報が、砂の里にも入ってきた。
五代目火影となった綱手という女から要請を受けて、テマリとカンクロウと火の国へと来た。

中忍試験の予選の時に戦ったロック・リーという男と共戦し、俺たち砂の忍は一時木の葉の隠れ里へと行くことになった。


――名前は、うちはサスケ奪還の任務には、関わっていなかったようだな…。
…………良かった。


任務に関わった者の中には、重体の奴らも居た。
――日向ネジ。
中忍試験の時、目をつけた奴でさえ、重体だ。


…名前がそうなるのは、きっと俺は…嫌なんだろう。
考えるだけで、胸の辺りが痛くなる。


すると名を呼ばれた。
場所を見ると、カンクロウが歩いてきている。


「なんか知らねーけど、五代目火影に呼ばれたじゃん」
「…そうか」




――火影に呼ばれたという部屋に入れば、中忍試験の時に見た面々が、担当上忍も含め揃っていた。
重体だと聞いていた日向ネジも車椅子に乗り、居る。


…確か治療を受けてからまだ一日しか経っていない筈だが…いくら三忍の綱手が医療に長けているとはいえ、日向ネジもやはり強いな…。
…しかし、わざわざ呼び出す必要がどこにあるんだ……?


視線を巡らせれば、あのうずまきナルトも、身体中を包帯で巻かれた状態で、居る。

――名前は、居ない。



どくん、心臓が強く鳴った。



けれど何か思う前に、火影が部屋に入ってきた。
椅子に座ると、部屋の中の面々を見渡す。


「――知ってると思うが、うちはサスケが里を抜けた」


芯のある声が部屋に響く。
後ろの壁に背を預けている俺の視界には、俯いたり、顔を歪める奴らが数人居た。


「任務は失敗。だがみんな、無事に帰ってきてくれた。それは間違いなく、朗報だ」


……この女は、何が言いたいんだ……?
それを伝えるだけなら、俺達まで呼ぶ理由も、一度に集める理由も、ない。


「――しかし、」


少し強く放った声に、俯いていた数人が顔を上げる。
五代目火影は一度そうして言葉を切ると、また部屋の中を見回した。


「今ここに居る者達は全員、名字名前と面識があると聞いたが…間違っていないか?」



どくん、心臓が強く鳴った。
――胸が、痛い、苦しい。



「綱手様、まさか…!」


右の方で、同じように壁に背を預けていた銀髪の男が、焦ったように身体を起こす。


「まさか、サスケが…!」
「――いや」


銀髪の男の言葉を遮った火影の言葉は、否定。
――うちはサスケが名前を連れていった。

俺は、そう、思った。
きっとあの銀髪の男も、その考えが頭を過ったんだろう。


「冷静に考えろ、カカシ。それなら奪還に行ったナルト達が言った筈だろう」


――なら、何だ…。
名前に、何が…。
奪還に関わっていないから、怪我を負っていたり、…死んで、…いや、違う、考えても当たりじゃないなら、こんな考え、消そう。


「――だが、半分正解だ」


…………半分…?


部屋の中の喧騒を圧し伏せるような芯のある声で、五代目火影は言った。



「名字名前も、里を抜けた」



――俺は、この女の言っている意味が、よく、分からなかった。





110623.