サスケと偶然会った。
もう里を出ていたかと思っていたから、嬉しかった。
いや…実際は会いたくなかったのかもしれない。
だってサスケは今から里を出ていくから。
――決意が鈍りそうになってしまうから。
夜の闇に消えていくサスケの背中を見ながら、伸ばしそうになる手を、唇を噛んで抑えた。
「――…サクラ…」
そして今、里を出る場所の直ぐ近くにあるベンチ、そこに横たわるサクラを見て目を細めた。
頬には涙が伝った痕が、まだ渇かず見えている。
…サスケが里を抜けようとしていること、気づいていたんだね…。
すごいや、愛の力かな。
「…ごめんね、サクラ」
ごめんね、ごめんね。
私は、サスケを止めようとしたら止めれていたと思う。
けど、それはしなかった。
サクラの髪を優しく撫でる。
朝になって目が覚めたら、サスケが居ないことにサクラはきっとすごく傷つくね。
それにすごく、泣くんだ。
「…ごめんね…」
傷ついて、傷ついて。
きっとすごく辛くなる。
――けれど絶対に、最後に幸せを持ってくるから。
――立ち上がり、歩き出す。
火影様や木の葉丸、アカデミーの先生、我愛羅やカンクロウさんやテマリさん、ガイ班や同期のみんな、そして第七班のみんなの顔が浮かんできた。
みんな、みんな笑っていて欲しい。
悲しい顔なんて見たくない。
みんな素敵な人だから。
――里を出て数歩進んだところで、足を止める。
後ろを振り返った。
火の国、木の葉隠れの里。
にっこり、笑う。
そして振り返り――前に居る人影に、目を細めた。
110622.