「お前ってば、ひとりじゃねーだろ…?」
砂の殻を破られ地面に落ちた俺は、体を動かすことが出来なくて。
けれどまだ動ける、このうずまきナルトという男が、首だけで体をこちらへ進めながら言った。
「一人じゃない…だと…?」
「ああ…。詳しいことはよく分かんねえけど、お前…小さい頃に名前と会ってるんだってばよ…?」
「………………」
うずまきナルトから名前へと、首だけズラして見た。
腹から血を流しながら気絶している。
「我愛羅…!」
――俺が、傷付けた。
名前が俺の方へと向かってくるのは、分かっていた。
けれど、力を抑えるという考えが浮かぶ前に、俺の砂が名前の体を突き刺していた。
「名前はきっと、お前に刺されるって…攻撃を受けるって分かってた…!」
目だけで、うずまきナルトを見る。
「それでも…!自分が傷付いても…!闇ん中で苦しんでるお前を助けようとした!俺ってばよく分かんねえけど、名前は、最初っからお前の傍に居てくれた、大事な人じゃねのかってばよ…?!」
「こわくないよ」
「我愛羅がいいなら、我愛羅といたい」
「すごいねえ、砂をあやつれるんだ」
「我愛羅は、ひとりじゃないよ。…わたしでいいなら、わたしがいっしょに居るから」
「――――……」
すうっ…と、自分の目から何かが流れた。
視線を戻して、名前を見る。
ザ、ザザ…と動きづらい腕を動かして、名前の頬に、指先で触れた。
「もしかしてキミ…こわがられたい系の人かな。いっぴきおおかみ、だっけ…?」
「こ、こわがられたい、系…?」
「ひっく…ちがう…名前じゃないよ……や、やっぱり名前なんだけど…」
「ご、ごめんね!、?」
「わたしには我愛羅が居て、我愛羅にはわたしが居る。だからどこに居ても、わたしたちはひとりじゃないよ」
「ひ、どい…な、ぁ…忘れちゃった、の゛…?」
「が、らは…ひどり、じゃ…ない、よ…?」
――…俺は、信じても…良いのだろうか…。
笑顔で接してくれて、体を張ってくれた人ですら、俺は嫌われていた…憎まれていた。
名前の頬を、ぎこちなく撫でる。
――…名前は…何時でも、傍に居てくれた…。
昔も、そして今も…。
……俺は…――、
「我愛羅!」
すると土が削れる音がして、テマリとカンクロウの声がした。
――俺はゆっくりと名前から手を離し、その手を地面につき体を起こす。
「止めだ…」
立ち上がると、少し身体がよろけた。
カンクロウに支えられる。
「………………」
俺はうずまきナルトを振り返って、そして名前を見下ろして――俺達はその場から立ち去った。
――…いつか…いつか俺は、信じられるようになるのだろうか…。
そしてそうなった時、そんな強さを持てた時…名前はまだ、俺の傍に居ようと、思ってくれているだろうか…。
110515.