――名前が砂がくれの里に来て四日くらいすぎた日の夜、おくじょうにいたら、下から声が聞こえてきた。
「おい、コイツ最近あの我愛羅とよく一緒に居る奴だぜ」
「で?そのガキがこんな夜中にどうしたんだよ?」
「さあ、何でも家族を探してるらしいぜ」
里の大人の人たち三人が、名前をかこんでる。
…よくないふんいきな、気がする…。
「ハア?家族?…やっぱりあの化け物と付き合うのはロクなもんじゃねーってな」
「可哀想にねぇ、お嬢ちゃん。捨てられちゃったんだ?」
「捨てられたんなら、もう探すの止めちまえよ」
ギャハハハハ!、周りに笑い声がひびいて――、
「ぎっ…!ぁ、ア゛…!」
砂になって下におりて、三人の人たちの首をギリギリと砂でしめつけていた。
――名前を悲しませる人は、ゆるさない…!
「我愛羅!」
びくっ、体がゆれて、砂が一気に首からはなれる。
三人の人たちは小さくひめいを上げながら…にげて、いった。
ぼくが、砂で、砂を使って、苦しめたから…、ぁ…。
ど、どうしよ、う。
心臓が、ばくばく、いつもよりもっとうるさくて、息が、上手にできない。
名前を見たら、すごくおどろいた顔をしてる。
き、気づかれちゃった。
み、見られちゃった…!
「今の…我愛羅が…?」
「っ、ぁ…えと…名前…っ」
い、いやだ…!
おねがい…!
ぼくから、はなれていかないで…!
「すごいねえ、砂をあやつれるんだ」
――にこっと笑った名前は、でもちょっとまゆを下げて、首をかしげた。
「でもなんで、あの人たちをおそったの?」
「…っ、…ぅ〜…」
「…?!え、あ、我愛羅?な、なんで泣くの?ええっと、ご、ごめんね?」
「ひっく…ちがう…名前じゃないよ……や、やっぱり名前なんだけど…」
「ご、ごめんね!、?」
なんで名前は、こんなに…やさしいんだろう。
今まではみんな、…この力を使う前ににげちゃってたけど、砂をあやつれるのが名前に知られたら、名前もぼくからにげてっちゃうって、思ってた。
初めてこんなにいっしょに居てくれた名前だけど、やっぱりこわがって、にげちゃう、って。
――でも名前は、にげないでいてくれた…。
「…我愛羅…」
「っ、な、なぁに…?」
「え、ええとねえ、その、」
めずらしく名前が口ごもってるから、ぼくは少し首をかしげる。
「…わたしがこんなこと言っていいのかなって思ったけど、この前我愛羅が言ってくれたから、言うね」
そして少してれくさそうに、まゆを下げながら名前は笑った。
「我愛羅は、ひとりじゃないよ。…わたしでいいなら、わたしがいっしょに居るから」
――ひとりじゃ、ない…。
…ずっとずっと、ひとりだった…、ひとりは、いやだったのに…。
分からないけど…名前にさわりたくて、しょうこ、みたいな…。
なんて言うか、ゆめじゃ、ないのかなって…。
名前のうでに手をふれたら、ちゃんと名前はそこに居て。
――ゆめじゃ、ない…!
「ぼ、ぼくには、…名前が、居てくれるんだね…」
「…うん、わたしには、我愛羅が居てくれる…」
ぼくたちは、もう、ひとりじゃないんだ。
110513.