「俺はお前に伝える為に、ここまで来た」
「自分でもちゃんと分かってるみてぇだが…、――お前の居場所はここじゃねえ。お前の居場所は我等の場所」
「いずれ迎えが来る。断った時は…、…ま、そんなことは無ぇか」
「俺の役目は、これで終わりだ!」
ギジ・セイドはそう言って、またにやっと笑ったかと思えば、右手に持ったクナイで自らの首をかっ切った。
糸が切れたように倒れたギジ・セイドの手からクナイが転がっていって。
床に血が広がっていくのを視界に映し始めて少しして、私はようやく掠れた声を漏らした。
呟きとすらも、言えない。
「…ぁ…」
ギジ・セイドが一人でべらべら喋っていたのを、訳が分からずただ眉を寄せながら聞いていたら、いきなり、こうなった。
止める暇も無いくらい、あっさりと、死んだ。
――するとどよめきがして、気付いていなかったけれど、煙幕が晴れていた。
視線だけズラすと、前の方で椅子に座っている、驚いた表情の火影様と目が合って。
ハヤテさんが、ギジ・セイドの横に片膝をついて、その血に濡れた首に手をやる。
そうして立ち上がって、横に首を振った。
…私の居場所…、いずれ迎えが来る…。
――何のことだ…?!
ハヤテさんが火影様の方へと歩いていく。
ギャラリーから、誰かが私の名前を呼んでいる。
それに何よりも、私に伝える為にこの試験を受けて、そして――自殺したっていうことなのか…?!
そんな…あ、あり得ない!
だって私は、わ、私は、そんなことをされるような、だって、…何で!
観客なのに!
「――っ…?!」
するといきなり、ギジ・セイドの腕が爆発した。
そこから誘爆するように、爆発していく。
「伏せろ、お前ら!」
「名前!離れろ!」
――きっと今この時間は、一瞬にしか満たない筈だ。
なのに何故だか世界が、スローモーションで見えて。
ギャラリーで生徒達を床に伏せさせる先生達や、火影様を守ろうとする中忍の人達が視界に映っている。
そして私の目が捕らえているのは――、
「!待て!名前!」
ギジ・セイドに向かって、走り出した。
起爆札は見当たらなかったから、よく分からないけどきっと身体の中から爆発してる。
そんなの、止める術が自分に無いのは分かっていた。
けど、けど、走っていた。
――何故だか、波の国でのカカシ先生の言葉が頭の中に響く。
「忍の体は、その忍の里で染み付いた忍術の秘密やチャクラの性質、その体に用いた秘薬の成分など、様々なものを語ってしまうからな…」
――何で…、何で…!
理解することなんて、絶対に不可能で。
爆煙を上げていくギジ・セイドへと向かって、私は――、
「名前ーっ!!!!」
ドォン!と、塔を揺るがす程の爆発音が響き渡った。
110509.