「ちょっとナルト、何やってんのよ!名前に隙作らせちゃったじゃない!」
「だって、だって!サクラちゃん!何であんな…っ、何なんだってばよ!」
紫色の煙幕が完全にギジ・セイドと名前の姿を覆い隠して何も見えない。
そんな、もくもくと広範囲にかけて厚く広がる煙幕の中に飛び込んでいこうかとするナルトの首根っこを、カカシが掴んだ。
「落ち着け、ナルト。今はまだ試合中だぞ」
「っ、じゃあ!じゃあ!カカシ先生は何とも思わねえのかよ?!名前ってばまるで、まるで…っ、俺達の仲間じゃねえみたいなこと…!」
「………………」
ナルトはぎりっ…!と柵を握り締める。
サスケは煙幕で覆い隠された下を見て舌を打つ。
するとサクラが不安気にカカシを見上げた。
「ねえ先生、名前…何か私達に隠してるのかしら…。だってあの、ギジ・セイドだかって奴が言ってたわよね」
「おい、――アレ、見せてくれねえのか?」
「ああ、そうか…。コイツらの前じゃ、見せらんねえか」
「名前、凄く驚いた顔してたわ。それにその後直ぐに術を出して…まるで私達にそれ以上聞かせないようにした、って感じよね…」
サクラの言葉を、サスケが引き継ぐ。
「それにアイツ、クナイを床に突き落とした。すげえ勢いでな…。むやみやたらにあんなことする奴じゃねえ」
ぎり…!とまたひとつ、音がする。
ナルトが目を血走らせ歯を食いしばりながら、紫の煙幕を見つめていた。
「一番気になるのは今さっきのことだってばよ…!」
「お前の居場所は、ここじゃねえ」
「上に居るガキ共が、お前の場所じゃねえ」
「何なんだってばよ、アイツ…!勝手に名前のこと決めつけやがって…!」
「分かっていますよ」
「それに名前も名前だってばよ…!確かに名前は、自分のことなんて何にも考えねえで、俺達のことばっか考えてる奴だけど、だからって名前が七班じゃねえってことにはならねえ!っ、名前は!俺達の仲間だ!」
全身で叫ぶナルトの頭に、ぽん、とカカシが手を置いた。
「それは名前も分かっているよ。もちろん、俺達もな…。ただそれを変える程の何かが、あの男の言った言葉の真意に込められていたとするなら…――、」
そこでカカシは口を閉じた。
濃く存在していた煙幕が、徐々に薄れ始めていたから。
空気中へと離散していく煙幕が、段々と人影を露にし始めて――、
「なっ…?!」
会場中が、ざわついた。
会場中に、驚きの波紋が伝わった。
「な、何で…っ?!」
そこには、呆然と立ち尽くす名前と――、
「何が…、一体何があったんだってばよ…?!」
床に仰向けに倒れ、血まみれになり、既に息絶えているらしいギジ・セイドの姿があった――。
110509.