「では、これから第一回戦を開始しますね…。対戦者二名を除く皆さん方は、上の方へ移動して下さい」
――まさか最初だとは…まあ順番なんて特に大した問題じゃないけれど…。
相手は…ギジ・セイド。
確かこの人の班は、この人以外が今さっき棄権して出ていったんだよな…。
「名前、頑張るってばよ!名前ならぜってえ!勝てるってばよ!」
「うん、頑張るよ」
ゴン!と拳を合わせて、ナルトは上のギャラリーへと上っていく。
「名前、頑張って!でも無理はしちゃ駄目よ?具合はどう?大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。ありがとう、サクラ」
少し不安げに微笑むサクラににこっと笑う。
そして、じっと見てくるサスケを見た。
「…………」
「サスケ、自分の出番が終わるまで、そのアザ、気をつけてね」
「…フン、他人の心配してるようじゃヘマするぜ」
歩き出したサスケを、サクラが支えていく。
サスケの言葉に笑っていると、すれ違うその瞬間――、
「…気をつけろよ」
――思わず目を丸くした。けれど直ぐに笑みを深める。
「ありがとう、サスケ」
そうして、何気なくギャラリーを見上げるとカカシ先生と目が合った。
もうナルトも一緒に居る。
「カカシ先生!応援するってばよ!」
「…どーしよ。何かすっごい緊張するんだけど」
「だ、か、ら!応援!」
二人でギャアギャア(と言ってもナルトが一方的に)騒いでいるところに、サクラとサスケも到着して。
私を見て少し目を細めたカカシ先生に、にっこり笑った。
「――では、両者前へ…。第一回戦対戦者…名字名前vsギジ・セイド両名に決定…。依存はありませんね?」
他の受験者がギャラリーに上がりきり、ハヤテさんが言った言葉に頷くと、ギジ・セイドがこっちへ歩いて来た。
「…ハッ」
目の前に立ったギジ・セイドは鼻で笑うと、いきなり胸ぐらを掴んできた。
そのまま引き寄せられて踵が少し浮く。
そしてその瞬間、ギャラリーからの殺気が膨れ上がった。
…みんな、私とギジ・セイドの雰囲気に触発されて殺気がすごいな…。
もはや何処からも殺気が出されてて、どれが誰のだかよく分からないよ。
ギジ・セイドは、私が瞬時に首元にあてていたクナイを横目で見ると、にやっと笑って更に瞳を覗き込んできた。
というかそもそも、いきなり何をするんだこの男は。
それにみんなも、今からそんなに殺気を出していたら気が張って疲れてしまうんじゃないかな…。
「……勝負はまだ、始まっていませんが…」
するとハヤテさんがギジ・セイドの腕に手を置いた。
ギジ・セイドは再び鼻で笑うと私から手を離して、元の場所へと戻っていく。
――殺気がおさまった。
ハヤテさんはギジ・セイドを見て、そして私を見ると、ひとつ、咳をした。
「それでは…、――始めて下さい!」
――次の瞬間、後ろから音が聞こえて咄嗟に私は後ろ手にクナイを構えた。
キィン…!
次は前、次は左、次は右、次は後ろ。
ギジ・セイドがクナイを構え襲ってきて、眉を寄せながら防ぐ。
――速い…!
後ろから襲ってきた攻撃を前に屈んで避けて、自分の上を貫いている腕を掴む。
「ふっ…!」
そのまま投げ飛ばせば、ギジ・セイドは一回転して、また直ぐに襲ってくる。
地面を蹴った勢いで突き出してくる右拳を左手で払い、右腕をギジ・セイドの顔めがけて繰り出す。
上半身を反らして避けたギジ・セイドはそのまま足を振り上げて、私は宙に蹴り飛ばされる。
「名前!!」
と誰かの声が聞こえる中、私は空中で体勢を変える。
そうして下を見れば、ギジ・セイドがにやりと笑って勢いよく地面を蹴った。
胸の前で腕をクロスさせたけれど、再びギジ・セイドの蹴りに飛ばされる。
「っ…!」
私は空中でしゅるしゅると回転して、天井に足を付けた。
そして未だ空中に居るギジ・セイドへと向かって、勢いよく天井を蹴る。
にやっと笑ってクナイを構えるギジ・セイドに、私が放った二つのクナイが左右から襲っていく。
ギジ・セイドがその二つのクナイを弾く瞬間、近くに迫っていた私がクナイを振り下ろすと――、
「ハッ、甘いぜ」
防がれた。
私が隙を付けなかったと思い鼻で笑ったギジ・セイドに、私はにっと口角を上げる。
「なっ…?!」
床を蹴ってギジ・セイドの後ろへと飛び上がっていた私の分身が、ギジ・セイドを蹴り飛ばした。
110508.