夜になり、他のチームが休息を取り活動を止める頃、予定通り俺達は動き始めた。
そして少し時間が過ぎた時、離れた場所で見つけた。
テンテンを助ける女。
あの女は確か、今朝、うちはサスケと居たな…同じ班か。
女は印を結び術を使い大蛇を倒す。
近づいていけば、大蛇には横に長く鋭い切傷があるのが見えてきた。
あれもあの女が…、ほう…中々に出来る奴かもな。
助けてもらったからか、テンテンは何もせずに女の元から去っていった。
まあ人を見つけたら直ぐに巻物を奪えなんて馬鹿な作戦は立てていないから、当たり前だとも言えるが。
女が居る場所から数本程隔てた場所にある木の上に着地して様子を伺う。
静かな月明かりの下でも、白眼なら見えた。
女の右腕に微かな傷跡。
血が流れている白い肌が、じわじわと傷口から鈍い青色になってきている。
――…大蛇の毒か…。
あの速さで回る毒なら恐らく、付けられたのはテンテンを助けた時…だな。
すると女はクナイを握った左腕を振り上げた。
確かにその勢いで突き刺したら毒は飛ぶかもしれないが、痛みは軽くない。
毒抜きだろうかと一般の考えが浮かんだが、それは直ぐにクナイの振り下ろされるスピードで消される。
毒抜きじゃないだろう。
…だが、毒抜きじゃないなら何故クナイを…――、
ザシュッ…!!
――俺は思わず声を上げそうになった。
月の白い光の中で、鮮血が濃く目に焼き付く。
毒抜きじゃないだろうと、俺は思っていた。
それは痛みやらの理由があるし、何より女に躊躇が無かった。
普通なら、痛みが来ると分かっていたら、痛みに備えて顔が固くなる筈。
なのにこの女は、まるで呼吸をすると同じように、何の躊躇もなく何の恐怖も出さずに、自分の腕を切り裂いた。
「………………」
静かにポーチからクナイを取り出し握る。
右腕から止めどなく血を流す女を見てから、枝を蹴り女の後ろへと一瞬で移動した。
「――…ああ、ええと…日向ネジさん、でしたか…?」
女の首元にあてようとしたクナイは、女が防ぐ為に出したクナイと当たって細い金属音をさせた。
やはり…中々に出来るな。
自然と片方の口角が上がる。
クナイを静かに引くと、女も左腕を下ろして、俺の方に体を向けた。
「ごめんなさい、私は巻物は持っていませんよ」
「ふっ…、そう言われて信じる奴が居ると思うか…?」
「ああ、まあ…。別に調べてもらっても、…っ」
そこで女が眉を寄せて右腕を見たから、俺も見ると、そこには青くなっている右手首。
女はめんどくさそうな顔をしたかと思えば、再びクナイを振り下ろそうとした。
「――お前から巻物を奪うのは、やめだ」
だから、その手を止めた。
驚いた顔の女を余所に、印を組んで白眼を発動させる。
ポーチから千本を出して、特定の箇所に突き刺した。
「自分の身体を上手く管理出来ない奴が、上手く戦える筈はない。お前に名を聞くのは、もう少し考えられるようになってからだ」
「あ、ええと、はあ…」
ぼんやりとした返答をする女に背を向けて歩き出す。
すると名前を呼ばれたので、振り返った。
「何だ」
「あなたって、テンテンさんと同じ班ですよね…?」
「そうだ」
すると女はパアッと笑顔になって、にっこりと笑った。
「毒抜き、助かりました!ありがとうございました!」
…何故コイツはこんなに笑っているんだ…。
…よく分からない奴だ。
110505.