「――俺さ俺さ、うずまきナルト!」
――開口一番そう始まった、ナルトの自己紹介。
穏やかな自然をバックに、私達の前に腰を下ろしているのは、はたけカカシ。
私達、第七班の担当上忍。
そして私の逆側からナルト、サクラ、サスケが座る。
「好きな物はカップラーメン!もぉっと好きなのはイルカ先生に奢ってもらった一楽のラーメン!」
――……いや、もう、これ……夢じゃないよね…?
カア、カア、と。
まだ時間帯的には少し早いであろう黒い鳥が淡水色の空を飛んでいく。
――私が、私がだ!
私がこの班員だと…?!
つい数時間前まで暗号班にも解けないな、ハハ!とか思ってたんだぞ…?!
いやこんなに陽気じゃあなかったけれど。
っ、とにかく!私は暗号班でもないし、シカマルみたいに桁外れな知能指数も持ってないのに…!
………………。
…………!
待てよ…、でもこれは逆にチャンス…?
この難易度が最高レベルな三角関係がどうなるかを、いち早く、一番近くで知れる…見れる…!
それに少しの助言とかなら、出来るかもしれない…!
「嫌いな物は、お湯を入れてからの3分間。趣味はカップラーメン食べ比べ!将来の夢は――
火影を超す!
んでもって、里の奴等全員に俺の存在を認めさせてやるんだ!」
――火影を超す。
その言葉が耳に届いた時、私は微かに目を見開き、そしてナルトを見た。
ナルトは自信に満ち溢れた、意気揚々とした表情をしていて、額の額宛てをカチャカチャ、カチャカチャ、と興奮したように触っていた。
――ふっ、と。
思わず笑みが零れる。
いいね、ナルト…。
すごく、すごく、いい。
とても素敵だよ、とても。
「……はい、じゃあ次」
「春野サクラです!好きなものはぁ……」
……?おや?
サクラの言葉が止まったので、思わず首を傾げてそっちを見る。
そして頬を赤く染めてサスケをちらちらと見ているサクラを見て、直ぐに納得した。
「ていうか好きな人はぁ…。で、趣味っていうか…将来の夢はぁ……キャー!!」
「ぁ、はは……」
おかしさ半分、可愛さ半分で眉を下げて笑う。
ちらりとカカシ先生を見れば、片方しか出ていない目が、けれどそれでも呆れたような、そんな感情が見える。
――……それにしても…。
ちらり、視線をまた戻す。
――サスケは本当に、クールだねえ。
まあこのクールさも、サスケの象徴的な特徴でもあるわけだけど……。
「ふふ」
けれどまあ、微笑ましいね。
可愛いじゃないか、とても。
サクラはまあ、その、…お世辞にもお淑やかとは言えないけれど、サスケの前ではすっかり乙女じゃないか。
ああ、素晴らしいね、恋心!
透き通るような空に、仰々しく、そして指の先まで手を伸ばして、お腹の底から言葉を紡ぎたくなる。
深く息を吸うことでそれを抑えて、目を伏せた。
ううん、そうだねえ…。
この二人はサクラがサスケが大・大・大好きで、けれどサスケもちゃんとサクラが好きなんだよ。
そしてたまにサスケが放つ威力抜群の言葉に、もうサクラはふにゃふにゃに骨抜きにされてしまう、――なんてところかな。
「(この年頃の女の子は忍術より恋愛だな)じゃあ、次」
「…名は、うちはサスケ。嫌いなものならたくさんあるが、好きなものは別に無い」
あら、ほら。
クールだよ、クール。
「それから、夢なんて言葉で終わらせる気はないが、野望はある…!一族の復興と、ある男を必ず――……殺すことだ…」
「「「「…………」」」」
場の空気が静まり返る。
ざあっと少し強くて冷たい風が横に流れていく。
私も例に漏れず閉口し、更に耐えきれず唇をキツく引き結び、ぎゅうっと眉を寄せた。
いっ、いちっ、一族のふっ「げほぉっ!」――復興ってつま、つまり……!
「げほっ!う゛、ごほっ!」
「あれ…君、大丈夫?」
「す…すいません、大丈夫です…」
一族の復興だと……?!
サスケ…サスケはそれがどれほど、たっ、大変なことか分かっているのか、な…。
……問題は山積みだ。
まあ私は無信教だからあまり信じていないけれど、アダムとイブのその後然りだよ。
「(この子…サスケの話を聞いてからすごく辛そうだな…)……はい、じゃあ最後」
「……名字名前です。好き嫌いは特にこれという物は…。趣味は…人間観察、ですかね…」
「(ああ…なるほど。だから人の感情を読み取ること、洞察力に長けてるのか…)」
「将来の夢は……」
三角関係がどうなるかを、いち早く、一番近くで知れる…見れる…!
それに少しの助言とかなら、出来るかもしれない…!
「将来の夢は…誰しもみんなが幸せな世界が、見たい。そして微力でも、手助けが出来るならいくらでもする――。…そんなところです」
「……そう、そうか…分かったよ。――はい、じゃあ自己紹介終わりー」
110326.