舞台上の観客 | ナノ
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「#甘甘」のBL小説を読む
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中忍試験の会場。
腕を組み壁に寄りかかり、ただ前を見据えている。


「――おい、アイツら…」
「…ああ、昨日の生意気なガキ共じゃん」


隣に居るテマリとカンクロウの話す声が聞こえてきて、ゆっくりと視線を扉へと移す。

――うちはサスケ…。

この試験の為に木の葉くんだりまで来た日に、会った奴。
殺す対象に、なりそうだ。


「……………………」


そしてうちはサスケと共に居る女を見て、目を見開いた。
どくん、どくん、。
ごくり、唾をのむ。



「はい、これ、落としたよ」



木の葉に、居たのか…。



「僕が…怖くないの?」



久しぶりに感じる。
胸の辺りが、痛い。
痛い、痛い、苦しい。



「あ、ええと、その…ね。この里の、いちばん偉い人に、出ていくよう言われちゃったんだ!あはは、」



間接的に言えば、彼女を追い出したのは俺だから。
――今なら分かる。
十にも満たない子供が、国々を練り歩くのがどれほど辛くて、危険なことか。



「わたしには、我愛羅が居てくれるの…?」



どくん、どくん、…!
胸が、痛い。
胸が、胸が、痛い。



「僕には…名前が居てくれる…?」



こんなこと、予想なんて出来なかった。
それでも、心の何処かでまだ望んでいた。

――もう一度、会いたい…。

けれど結局、覚悟が出来ていないのか。
今までで一人だけ、俺に笑いかけてくれた彼女が、俺を見て、顔を歪めることを。


「おい!あれ名前じゃないか?!」
「ホントだ!名前じゃん!」


――名前が此方を向いた。
――目が合う。

ど、くん…!

名前は数秒俺を見つめて、そして驚きに顔を染めて――、



「ありがとう、我愛羅」



胸が、痛い。痛い。

きっと知っている筈だ。
俺がお前を追い出した里の長の、息子だと。
俺が、元凶だと。

嫌だ、俺を見て、顔を、歪めて、嫌だ、止めろ、顔を、歪めて、俺を、睨んで、目を、逸らして――、



「我愛羅…?!」



――彼女は、笑顔だった。
顔を輝かせて、俺の名を呼んだ。


それだけで、
たった、それだけで、
俺は――、


一瞬で移動して、名前を抱き締めた。
柔らかい香りがする。
髪も相変わらず、――相変わらず柔らかい。


また、胸が、変だ。


少し落ち着く。
何故俺は抱き締めた…?
こういう時、胸がこうなっている時は、抱き締めるものなのか…?


「我愛羅…」


分からなくなって離れる。
名前は少し驚いていて、けれどにこっと、懐かしそうに目を細めて笑う。


――違う、そうだ、あの人も、笑顔だったのに、俺を、――俺を、…。


胸が痛い。苦しい。
分からない。何もかも。
要らない。要らないんだ。


何も言わずに後ろを向いて元の場所へと戻ってくる。
どくん、どくん、。
壁に背を預けて、真っ直ぐに前を見据えて、


「名前、お前…我愛羅と知り合いだったのか?!」
「ま、まあ何にしても久しぶりじゃん!」


目を、閉じた。






110503.