会場に向かう私達の所にロック・リーが来て、何故か亀が現れて、ロック・リーに似ている人が現れて。
「それより、カカシ先生は元気かい?君達!」
王道を突き進む青春劇を披露してくれた二人の、ガイ先生と呼ばれた人が、一瞬で呆然としている私達の後ろに移動した。
「人は僕らのことを永遠のライバルと呼ぶよ…」
キラン、と歯を輝かせたガイ先生の手を、私はぎゅうっと握り締めた。
「感動しました…!」
涙を浮かべながらそう言えば、ガイ先生は目を輝かせて――隣に居る三人からは絶叫が聞こえてきた。
「な、な、何言ってんだってばよぉ!名前!」
「そっ、そうよ!名前、どうしちゃったの?!」
「おい、お前…!頭大丈夫か!どこかに打って、…!」
首を傾げて三人を見れば、サスケが言葉を途切れさせて、そして三人が息をのむ。
何言ってるんだ、って…。
私はこの手の話に目が無くてね…。
青春は素晴らしいよ!
まさかこんなにも王道な青春を見せてくれる人達が居たなんて…!
ノーマークだった…。
「おい、まさか…!」
「名前、さっき目眩で壁に頭ぶつけてたわよね!」
「あれは凄い音だったってばよ…。何かおかしくなってても不思議じゃねえくらい!」
するとぎゅうっと手が握り返されたので、私はガイ先生を見上げる。
「君は…素晴らしいね!どうだい?君も一緒に、青春フルパワーで…!」
「あ、いや…私は見ているだけで十分です」
観客という、立場が違うからこそ楽しめるんだ。
青春の話はとても好きだけれど、舞台上に上がるのは遠慮させていただこう。
「名前さん、でしたか?」
「あ、はい、そうです」
「ガイ先生、名前さんはどうやら身体が弱いようなんです。だから僕や先生には…きっと…」
近づいて来たリーさんが、瞳を潤ませてううっ…!と腕で目を拭う。
そんなリーさんの肩にガイ先生が手を置く。
「いいか、リーよ…。したくても出来ない人の為には、自分がその人の分まで熱血に青春することだ!」
「っ…押忍!」
するとガイ先生は再び私の方を向いて――、
「君も諦めることはない!青春の証は、何も光る汗だけじゃない。こうして――ハグすることで、俺が君に青春を伝えよう!」
私を、痛いくらいにギュッと抱き締めた。
けれど何か思うよりも先に、私の体はガイ先生から離れさせられる。
ナルトとサスケがガイ先生を引き剥がすのが見えて、引っ張られた腕の先を見ればサクラが居た。
「わ、私達、もう行きますね!あはははは〜」
「あああああ後で会おうってばよ!ゲジ眉!」
「おいサクラ!早く名前を連れてけ!――何とかしねえと…!」
逃げるようにしてその場を去ってきた私達。
早く会場に行かなきゃ、そろそろ時間が危ない筈なのに、三人は腕を組み眉を寄せながら私を見つめている。
「…あのさ、みんな。時間、結構危ない気が…」
困ってしまって、眉を下げながら笑うと、三人は視線を交わし合った。
そうしてサスケが私の前に来る。
「……」
「……」
「……」
「…あの、サスケ?」
「(で、出来ねえ…!)」
するとナルトが来てサスケを突き飛ばした。
「なに躊躇してんだってばよ!早くやらないと、困るのは名前なんだぞ!」
「え…?な、何が?」
「…っ」
「ナ、ナルト?」
「〜〜っ…!」
するとサクラが来て、ナルトの肩に手を置いて退かせた。
「やっぱり同じ女の私が一番やりやすいわ…。一番負担もかからないだろうし……名前、ごめんね!」
「――あ、サクラ」
何故だか右手を上げていたサクラの髪の毛に手を伸ばす。
「…はい、ほこりが付いていたよ。リーさんの体術すごかったからね、その時に巻き起こった風とかでかな」
にっこり笑って、廊下に取り付けてある時計を見上げた。
「もう行こうか、時間厳守だから」
「や、やっぱり無理〜!」
「お、同じ衝撃与えて元に戻す作戦が失敗だってばよ!」
「ちっ!このまま試験に行くのか…?!」
そうして会場に着くと、ドアの前にカカシが居て、三人は慌てて事情を話し始めることとなった。
110502.