舞台上の観客 | ナノ
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「#年下攻め」のBL小説を読む
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「ーー報告は以上だ」


言ったサスケに、カカシはにこりと笑みを見せる。


「ありがとう、サスケ。実際のところ、お前が持ち帰ってきてくれる情報に、かなり救われてるよ」


いや、と短く答えるサスケに、カカシは少し悪戯げに笑って、机の上に肘をついた。
組んだ手の上に顎を載せる。


「名前なら、今日任務から帰ってくる予定だから、よかったらここで待ってる?」
「……別に、聞いてない」


サスケはふいと顔を逸らした。
ーー意外と、四人の中でも分かりやすいほうなんだよね、とカカシは心中で呟く。
その時、火影室の扉がノックされる音がした。


「カカシ先生、失礼します」


その声は今まさに話していた名前のもので、微かに肩を揺らしたサスケに、カカシは少し笑うと、扉の向こうにどうぞと言う。
すると扉が開かれて、入ってきた血塗れの名前に、カカシとサスケは驚愕した。


「任務の報告にーーって、サスケ!?」


目を丸くした名前はすぐに、にっこりと笑う。


「帰ってきてたんだね。久しぶりに会えてとても嬉しいよ」
「お前……!」
「旅の道中、怪我とかしなかったかな。大丈夫?」
「俺のことより自分のことを……!この、ウスラトンカチ……!」


舌を打って怒るサスケに、名前は首を傾げる。
カカシが目を丸くさせて立ち上がると言う。


「いつも何かしら怪我して帰ってはくるけど、今日は特にひどいな。名前、報告は後でいいから、病院へーーっと、それより医療忍者を呼んだほうが早いかな」
「いつも、だと?」


サスケがぴくりと眉根を寄せる。
名前はようやく理解したというふうに、ああ、と頷いた。
苦笑し、血の付いた自分の腕を挙げて見る。


「すみません、これ私の血じゃないんです。返り血を浴びてしまって。もう乾いてるから、部屋を汚すことはないかなと思ったんですけれど、やっぱりだらしないですよね。早めにお耳に入れておいたほうがいいかと思った情報があったので、そのまま来てしまいました」
「なんだ、そうだったの」


言ったカカシは安心したように頬を緩める。
しかしサスケは、返り血、と呟くと眉根を寄せたまま名前に目を据えた。


「それはそれで気に食わない。ーーカカシ」
「報告が済んだら、連れ帰って構わないよ。書類の提出はそう急がないから」


サスケは頷く。
自分を置いて、自分の話を進められた名前はただ瞬いていた。











血や泥を熱いお湯で洗い流せば、生き返ったような気分がした。
まだ昼を少し過ぎた頃なので、窓から差し込む陽射しの中で浴びるシャワーはそれだけで気持ちがいいのに、上がればサスケがいるということがさらに嬉しい。


「お待たせ、サスケ」


任務報告を終えるとすぐにサスケに家に連れ帰られて、浴室へと押し込まれた。
せっかく久しぶりに帰って来たのだから何かおもてなしでもしたかったのだけれど、確かに任務で汚れたままの体じゃお茶を出すこともできないので、素直に体を洗わせてもらうことにした。


居間へ戻ると、私を振り返ったサスケは肩を掴んで引き寄せてくる。
サスケは私を抱きしめると、髪に顔をうずめた。
息を吸って、吐く。
抱きしめる腕にさらに力を入れて、サスケは小さく言った。


「……よし」


その言葉に私は慌てる。


「ごめんね、血腥さかったよね」
「匂いだけじゃない」


首を傾げる私に、サスケは言う。


「返り血なんて浴びるな、このウスラトンカチ」


私は、ごめん、と苦笑した。


「もっと鍛錬に励むよ」
「いや……お前の場合、強さがどうこうの話じゃない」


サスケは体を少しだけ離して、私を見る。


「カカシはさっき、お前が、いつも怪我をして帰ってくると言っていた。任務の度に、今でも怪我してるのか」
「怪我……と言っても、ただの掠り傷だよ」


笑えばサスケは息を吐く。


「相変わらず、お前は自分に頓着しないな」
「サスケも、私のことを気にしなくていいんだよ」


言えばサスケの眉根が寄せられて、私は慌てて、サスケの腕の中で両手を振る。


「えっと、サスケが私を心配してくれることは分かるようになったし、それをとてもありがたいと思うんだけど、私は忍で、忍に怪我は付き物だから。だからそう気にすることじゃーー」
「無理だ」


言葉を遮られて言われて、私は目を丸くする。
私を抱くサスケの手に、僅かに力が込められたのが分かった。


「……大事にしてる、この世で最も大切なものが他の奴に傷つけられて、普通でいられるわけがないだろ」
「ああ、確かにそれほど大切なものが傷つけられたらーー」


言い差して私は、はたと気づく。
サスケの言うものが何なのか分かって、驚いて見上げようとすれば、けれど再び抱きしめられてサスケのことが見られなくなった。
触れるサスケの首許が熱い。


「俺は今は、お前の傍にはいられない」


呟くようなサスケの言葉に、私は戸惑いながら頷く。


「だから、お前のことを守ってやれない」


ただ、と言って、サスケは少しだけ体を離した。
私の手を取り、指を絡める。
耳許に顔を寄せられて、思わず小さく息を呑んだ。


「指の先まで、お前は、俺のものだ」
「サスケーー」
「だから勝手に、怪我はするなよ」


そう言われて、私は何も言えずにただ頷く。
頬に昇ってきた熱を感じてうつむいていれば、サスケがちらりと笑う気配がして、私は顔を上げた。
目が合うと、サスケはさらに口許の笑みを深くさせる。


「忘れるな」


言ってサスケは、私の首許に顔を寄せた。
微かな痛みが走って、私は目を丸くする。


「サ、サスケ、痕がーー」
「残っているかぎり、思い出して、理解しろ。自分がいったい、誰のものなのかを」


離れたサスケは、私の首許を見て、どこか満足そうに少し笑う。


「俺はまたすぐ木ノ葉を出なくちゃならないが、次戻ってきた時、懲りずに傷を負ってたら、その分だけまたするからな」
「だけどそれだと、罰みたいだね」
「罰だからな」


私は笑って首を振った。


「確かに少し恥ずかしいけど、罰じゃないよ」
「……何?」
「だって、嫌じゃないから」


言ったところで押し倒されて、私は目を丸くする。
どこか切羽詰まったような表情のサスケに、腕を掴まれ組み敷かれた。


「暫く会わなかったところに、そういう言葉を言うってことは……覚悟はできてるんだろうな」






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